研究課題/領域番号 |
24560188
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
松島 紀佐 富山大学, 理工学研究部(工学), 教授 (40332514)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 数値流体力学(CFD) / PIV実験 / 後流解析 / 圧力推定 / 翼 / 自動車 / 空力性能 |
研究概要 |
3つの研究課題別に実績を報告する。 ①「圧力推定手法の理論と精度の検証」 対象としているのは、主流に垂直な面)のステレオPIV実験データである。そのデータに付加価値を付けて活用する方策が圧力推定である。PIV計測をベースとした圧力推定は活発に行われているが、主流に垂直な断面内のPIV計測や圧力推定はまだ先行例が無い。そのため、従来の圧力推定手法使えず新手法が必要となった。提案にあたり新手法の有効性は確認したが、様々な境界条件、計測データの特性に関しての汎用性や精度の検証は未だであったので、其れらについてシミュレーションスタディを行った。其の結果、境界条件の設定法の指針が得られた。また、計測データに混在する誤差に関して、定常的な誤差は推定結果への影響が予測できることがわかった。しかし、非定常的なゆらぎの影響は予測不明なままである(今後の課題)。 ②「圧縮性流体への拡張」 ①で検証した手法は、非圧縮性の条件である、密度の物質微分が0、を考慮して定式化した。高速航空機周りの流れなどの圧縮性流体においてはその条件は成り立たない。ただし、翼周り遷音速流れのシミュレーション結果を調査した結果、後流での密度変化は小さいことが確認出来た。其の知見から、①で提案した手法にマイナーな修正を加え、衝撃波を含む翼周り流れ場の後流の圧力推定を行った。其の結果、平均誤差1%以内かつ最大誤差5%以内で圧力が推定できることが確かめられた。更に、海外の他の研究者によって提案されている圧縮性の圧力推定手法と比較したが、我々が対象とする流れ場では本手法の精度が優れていることも確認できた。 ③「高解像度計算による後流解析」については、未完了である。高解像度計算に必要な格子生成プログラムの改良の段階まで終了したが、その後、年度内に大規模格子を使っての高解像シミュレーションを行う事には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H.24年度に計画していた研究課題は、①「提案している圧力推定手法の理論と精度の検証」、②「圧縮性流体への拡張」、③「高解像度計算による後流解析」であった。 ①に関しては、100%達成できたと考えている。研究実績の概要で述べたように、主流方向に垂直な断面での後流解析では3次元性を無視すると精度が保証されないことを示し、複数断面のデータを利用する本提案手法が極めて有効である事を、航空機の翼および自動車の後流のケースで、確認する事が出来た。また、境界条件の与え方についても数々検討し、知見を得ることが出来たからである。 ②に関しては、当初予定以上の成果を上げることが出来た。なぜなら、①で検証した手法を拡張し、圧縮性流れの後流(主流方向に垂直な面内の流れ)に適用したところ、平均誤差1%以内、最大誤差5%程度の誤差で圧力が推定できることが確かめられた。他の研究者によって提案されている圧縮性の圧力推定手法と比較したが、我々が対象とする条件の流れ場では本手法の精度が優れていることも確認できた。つまり、H25年度に予定していた研究課題のうちの「圧縮性流れ圧力推定手法の検証」が前倒しで行えたからである。 ③に関しては、遅れ気味である。高解像度の計算に関し見通しは立っているものの細分化格子生成プログラムの作成を行った段階までは終了したが完了には至っていない。③のマイナスの進捗を②のプラスで相殺し、おおむね順調(予定通り)に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の課題の中で完了に至らなかった「高解像度計算による後流解析」を継続して行い8月までに成果を出す予定である。その結果に基づき、H25年度の課題として計画していた「後流現象の数理モデル化」を行い、「後流積分による新しい空力性能推算」の提案につなげる予定である。「後流現象の数理モデル化」を研究する事により、後流現象を引き起こす原因となった移動物体(翼や自動車など)の空力的特性がどのように後流面に影響を与えるのかを明らかにしたい。数学的には、体積的な物理量変動の積分がどのように表面積分に置き換わる過程を解析することになる。その解析をもとに、抵抗成分の要因別分解を行い「後流積分による新しい空力性能推算」の提案を行うわけである。達成度のところでも述べたが、当初H25年度の予定としていた「圧縮性流れの圧力推定式の検証」については、前倒しに研究が進んでおり、この成果を纏めて7月に学会発表すると共に論文誌に投稿する予定である。 また、昨年度の研究から明らかにされた今後の問題点である、「PIV実験データに含まれる不確定性や速度計測値の揺らぎへの対処法の検討」についてもH25年度に取り組む。この課題は、H26年度の課題として挙げている「実際問題への適用」および「非定常性の考察」に本質的に関連する課題であるので、データ同化やデーターフィルタリングの知識を学び、その知見を生かして、問題と取り組む所存である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は725,700円である。 当初、昨年24年度に予定していた論文1件をH25年度に投稿する。その投稿料として、100,000円使用する。また、625,700円については、高性能ワークステーションおよびその周辺機器の購入費用に充てる。
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