研究課題/領域番号 |
24560188
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
松島 紀佐 富山大学, 理工学研究部(工学), 教授 (40332514)
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キーワード | 圧力推定 / CFD-EFD 融合 / PIV計測 / 後流解析 / 翼 / 自動車 / 空力性能 |
研究概要 |
1.前年度から持ち越した課題「高解像度計算」については10倍の解像度での計算と圧力推定が終了し、以下の結果を得た。揚力がなく翼端渦の発生がない場合、1%以下の誤差で推定可能であったが、渦が発生する揚力有の場合はステレオPIV処理では、渦の3次元性が十分に捉えられないため、提案している圧力推定2.5Dモデルでは、10%程度圧力が低く見積もられる事が分かった。 2.「後流現象の数理モデル化」これまでの研究を通して、後流面をエントロピーと渦度の指標を用い部分領域に分けてモデル化出来るのではないかという仮説を立て検証を行っている。ある部分領域の各種物理量と一様流中における該当する物理量の比較から、移動する対象物体にかかる抵抗値を求めることが可能であると考えている。ここにおいても1.で述べたように、渦の強い3次元性の効果をどう取り込むかについて今後特に考察が必要である。 3.「圧縮性流れ圧力推定式の検討」 昨年度はマッハ0.7飛行時での計算を行ったが、更にマッハ数の高く圧縮性効果も強いマッハ数0.82でも良好な結果が得られることを確認した。我々が提案した2.5次元モデルは、大枠の数理モデルとして遷音速航空機の後流における圧力推定に有効であることの更なる確実な計算結果を得ることができた。 4.「後流積分法の確認」 圧力推定結果の有意義な活用法である後流積分による後流面の物理現象から抵抗値を算出する手法について、今後開発すべき計算機プログラムの概要について検討した。時間的なゆらぎ考慮するため、非定常性を考慮した後流積分に関し参考となる理論を文献から得ることができた。 5.「実際問題への適用」研究協力者である本田技術研究所四輪R&Dセンターから風洞PIV実験デ―タを頂き、圧力推定2.5Dモデルによる計算を行い、問題点を洗い出した。これら問題点の解決のために、データ同化やフィルタリングの知識を習得し、解決法の糸口を掴むことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れているとした理由は、学術雑誌への論文投稿を未だ行っていないためである。当初の予定では、H24年度の和文1件、H25年に国際的な学術雑誌に英文1件の論文を投稿する予定であった。投稿には至っていないが、論文執筆はコツコツ続けており、H26年7月末までには、投稿予定である。実際の研究課題の進捗に関しては、概ね順調であると考えている。申請書に記載したH24とH25の課題については、「後流現象の数理モデル化」以外は、順調に成果が纏まってきている。数理モデル化については予想外の結果を得たためH26にも継続して研究を行う。H26に取り組む予定であった課題のうち「実際問題への適用」については前倒して検討を重ねているので、H26年度末には、全体を通して期待通りの成果が得られるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.「後流現象の数理モデル化」抵抗値の計算にも関わる課題でもあり、物体の下流の現象(後流)を解析することで精密な空力性能解析が出来ることの根拠にもなる理論構築の一環となる課題である。物体の後流は移動した物体の状況を語る足跡でもあり、これまで広くは注目されていなかったが、今後、計測や解析が行われるようになれば、飛行機、自動車、列車などの輸送機器の設計やメンテナンスに有効であると本科研費助成事業担当者は確信している。輸送機器の空力性能向上への有効性が示せるところまで、数理モデルをブラッシュアップしたいと思っている。一番注意すべきは渦現象の一般化と2.5Dモデルへの落し込みであると考えている。また、H25年度の文献調査で習得した後流積分で抵抗を求める際に役立つ知識や理論をこのモデル化に取り入れる。 2.「実際問題への適用」研究協力者である、JAXA航空本部殿と本田技術研究所殿から、実際の風洞PIV実験計測データを頂いて、提案している2.5Dモデルの適用について、その精度や適用に当ってのデータ処理法等について知見をまとめる予定である。すでに、H25年度に本田技術研究所四輪R&Dセンターから風洞PIV実験デ―タを頂き、圧力推定2.5Dモデルによる計算を行い、実験データに適用する際の問題点を洗い出しており、これまでの研究期間中に蓄積してきたデータ同化やフィルタリングの知識を活用して、それらの問題点解決に早期に取り組む予定である。 3.「ユーザーインターフェースの整備」入力データや出力データの仕様を検討し、CFDやパソコンによる数値計算に慣れていなくても本システムを幅広く活用できるようなシステムの整備やマニュアルの作成も研究の一環だととらえ尽力したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
渦現象を含む場合において、予想に反した結果が出てしまったので、その原因特定に時間がかかり、成果を海外で発表する機会を逸した、また、学術雑誌論文投稿までこぎつけることができなかった。そのために必要であった経費約51万円が残額となった。 予想外の結果から新しい知見が得られる見通しがついたので、国内外の学会で発表すると主に、論文執筆に力を入れたい。この2年間学部4年、修士1年と育ってきた本年度末修士修了となる学生にも本研究から派生する興味深い計算を行って貰っており、学生にも論文を書かせる機会を与えたい。
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