トンボが乱気流中で自由に飛翔する理由を明らかにするため,昆虫型のマイクロエアビークル(MAV)を作成し,さらに風洞気流中に乱気流を生成することにより,乱気流中での特性を評価した. 乱流発生装置により主流の乱れと横風を生成し,羽ばたき位相差が突風や乱れの制御にどのように機能しているかについて調べた.位相差が大きい場合は流体力は小さくなるが,飛翔安定性に優れており,翅の位相差を利用して飛翔していることがわかった.一方,位相差が小さい場合は流体力は大きくなるが,主流の変動に対して弱いことが分かった.MAVの飛翔の効率・安定性はトンボとほぼ同等であるが,機体重量を軽減することができないことが課題となった. 複数のMAVを用いて群飛翔の性質を調べた結果,乱気流中では群飛行を行っても,乱れがないときのような優位性はなく,乱流中で飛べること自体が重要であることがわかった.複数のMAVが作る流れ場は,主流の乱れと比較して小さいため,乱流中において飛べる機体であれば,特に問題はなかった.このため,昆虫が群飛行を行う場合,飛行性能の向上よりも捕食相手に対して自分たちの大きさを大きく見せるなど,流体力学的な問題以外の効果が大きい可能性がある.ただし,もっと大きな鳥などの場合は,群飛行に意味がある可能性があり,この点については今後の課題である.
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