研究課題/領域番号 |
24560192
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
松野 謙一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (70252541)
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キーワード | 流体工学 / シミュレーション工学 / 航空宇宙工学 / 飛行力学 / 運動力学 |
研究概要 |
本研究課題は、現行プロトタイプの「数値航空機」に対する基盤理論・技術をさらに発展、応用・展開するもので最終目標の「数値実機試験」システム構築のための研究であり、研究方法の改良発展を行iいつつ、実証研究を行う。当初の研究項目は、次の6項目であった。1.アルゴリズムへの改良、2.流体力学・飛行力学連成シミュレーション手法に実現と検証、3.ジェット推進、プロペラ推進機構の導入、4.「数値ヘリコプタ」、5.「数値サッカーボール」「数値ブーメラン」モデルの作成と実証、6.前処理、後処理、途中処理の導入。 この研究項目に対し、平成25年度は、項目1、2、3、及び5に対し、予定以上の展開を行うことができた。まず項目1に関しては、新たに非圧縮性流体に対する移動格子有限体積法尾を3次元非構造格子に対応したコードを開発した。これにより、複雑形状への対応が飛躍的に改善された。項目2に対し、「数値紙ヒコーキ」を対象とし、新たにLESモデルを組み込んだコードを適用しその効果も見積もった。並行して、紙ヒコーキを実際に飛ばしてその軌道を測定、計算結果との比較を行い手法の有効性を検証した。項目3の「プロペラ推進」モデルについては、今までの運動量モデルは想定していたほどの効率が出ず、改めて検討の結果、モデル化を止め、直接プロペラそのものを回転させる手法をとった。これは、プロペラを囲む領域にスライド格子系を導入することにより、実現することができた。運動性の高い小型航空機形状を使い、最終目的である「デジタルフライト(飛行力学・流体力学連成シミュレーション)」システムの構築にむけて、プロトタイプを完成させることができた。項目5は、4枚羽根のブーメランに適用、手元から離れ戻ってくるまでの状況を完全に再現することができた。現在論文にまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、平成20年度~22年度実施の科研費基盤研究課題の発展・展開・実証研究であるので、既に、多くのプロトタイプを構築済みである。このような研究基盤に立ち、本研究目的に対応した6項目の目標に対し、それぞれについて、平成25年度は、大きな問題に遭遇することなく、当初の計画を上回る成果を得た。特に、本研究課題で、目標を実現するための理論的手法として、移動計算領域法があり、その基礎となる移動格子有限体積法について、平成25年度は、従来から懸案であった、非圧縮性流体に対する移動格子有限体積法について、3次元非構造格子について拡張することができた。また、構造・非構造の両格子に対する移動格子有限体積法は、長年の使用により、アルゴリズム的にも、プログラム的にも、研究室内で使用経験が積み上がり、最近では、計算が破たんすることが激減した。その結果、従来理論的に可能と思われるケースに対し、実際研究成果が生み出せるようになった。特に、平成25年度において、実際にプロペラを回転させ、推力を得、空気力学と飛行力学の本格的な連成シミュレーションを実現することができたこと、また、「数値ブーメラン」のプロトタイプを完成させ、実際に、飛行して手元に帰ってくる現象を再現することができたことは大きな進展である。本研究期間内に、「数値航空機」は、予定の成果を出すだけの見込みが既に得られたと考えている。最終年度である平成26年度で多くの実例を示すことを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、平成25年度中に本研究課題の大きな山場を克服できたことを記した。したがって、今後の研究の推進方策は、目標の1~6について、基本的に当初の研究計画通りに平行して推進するとともに、超えて実現している部分は更なる発展を試みる。研究計画の(良い方向への)変更であるが、プロペラ推進航空機について、当初、運動量理論に基づくプロペラ推進モデルを検討していたが、平成25年度にさまざまな要素を検討・検証した結果、想定したほどの効果を実現できなかった。したがって、平成25年度中期に、当初は計算コストの面から本研究課題の次のステップと考えていた「実際にプロペラを回転させて推進力を発生させるシミュレーション(この方がより実機に近いシミュレーション)」に切り替えることとした。プロペラの周りに特殊なスライド格子を導入するというアイデアにより、これは実現でき、結果は想定以上で、コストの増加もほとんどなく、一気に「数値プロペラ航空機」のプロトタイプが完成した。本格的な日本版「デジタルフライト」の実現に向けて研究を進めることとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度(2年目)は、研究計画通りの支出であったため、初年度の繰り越し(予想以上に廉価にサーバーが購入できたため)を、ほとんど消費することなく、そのまま最終年度に残すことができた。 研究計画が順調に進んでいるため、最終年度は、可視化用のコンピュータを複数台購入し、研究成果のデモンストレーションを効果的にやりたい。
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