前年度までの研究で、必要最小限のモーメントを使用して計算するモーメントベースボルツマン解法は、それ自身陰的に数値粘性が付加されるために単純な格子ボルツマン法と比較するとより高レイノルズ流れにおいても数値的に安定に計算できることが判明したので、平成26年度は最初にモーメントベースボルツマン解法を3次元一様等方性乱流の減衰問題と十分発達した3次元流路乱流問題に適用しその有効性の確認を行った。その結果、3次元一様等方性乱流の減衰問題においては流れ場が使用する計算格子で十分分解されている場合はモーメントベースボルツマン解法は、従来の格子ボルツマン法と同様に、精度のよい擬スペクトル法と同様の解を再現し、流れ場が格子で分解されない場合では、従来の格子ボルツマン法の解では高波数成分から発散していくのに対して、モーメントベースボルツマン解法では、陰的に入る数値粘性のために高波数成分が減衰し、安定に計算出来ることが確認できた。また、十分発達した3次元流路乱流問題にたいして得られたモーメントベースボルツマン解法の結果は、この問題の規範的なデータベースの結果と非常に良く一致し、モーメントベースボルツマン解法の信頼性が確認できた。 次に、CPU/GPUクラスタで実装できるマルチフィジックススケール対応解法の構築を目指して、モーメントベースボルツマン解法をMPIを用いたCPUクラスタでの実装およびGPUでの実装を行った。その結果、モーメントベースボルツマン解法は、従来の格子ボルツマン法と同様に、高い並列計算効率が得られることを確認した。ただし、モーメントベースボルツマン解法の並列計算時におけるデータアクセスにおいて、従来の格子ボルツマン法では見られない不都合が生じることが判明したので、この点に関しては今後さらなる研究が必要である。
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