研究課題/領域番号 |
24560194
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉永 隆夫 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40158481)
|
キーワード | エレクトロスピニング / エレクトロスプレー / ジェット / 表面張力 / 非線形 / 静電場 / ジェッティング / コーンジェット |
研究概要 |
近年,食品,医薬品,繊維などの分野で微小粒子,カプセルや微細ファイバーの需要が高まっており,静電場中での流体ジェットを用いてこれらを形成する試みが主に実験的に行われている.本研究の目的は,単相もしくは,コア部と円筒部からなる複合のジェットにおいて,静電場中でのジェットの不安定化のメカニズムを明らかにし,微粒子化またはカセル化を引き起こすパラメータ領域や,電気,流体特性を解析的に予測することを目的とする. 当該年度は,ジェットと同軸にある電導性の円筒シース上で与えられた外部電場の効果を考慮した解析を行った.外部電場はジェット周囲及び内部電場を決定し,ジェット表面に分布する電荷に力を及ぼし,ジェットの崩壊形状に大きな影響を与える.この電場解析の結果とジェット部に対して用いた長波近似により,周囲電場の影響を考慮した非線形のジェットの発展方程式を新に導出した.比較的大きなウェバー数に対して,ノズル先端部より噴出したジェットが不安定性と電場の影響により崩壊する様子を数値解析により種々のパラメータに対して調べ,以下の結果を得た:(i)軸方向電場の増加と流体の電気伝導性の減少につれて,ジェットの崩壊形状は,先端部に大きな液滴を伴うジェッティングモードから,マイクドロップになるスプレーモードを経て,先端部に液滴を伴わないスピニングモードへと遷移する.(ii)ジェットとシース間の距離は主にノズル付近でのテーラーコーン部の形状に影響を与え,シースまでの距離が増加するにつれて電場の影響は弱くなる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単相ジェット周囲の電場解析に予想外の時間がかかった.本解析では,ジェット周囲に同軸の電導性シースを仮定し,シース上での電場が強制力として与えられる.この時,ジェット内外部の電場は,ジェット表面での電荷分布とシース上での電場の相互作用として決定され,さらに,電荷分布はジェット形状の影響を受け,ジェット形状は内外の電場により影響を受ける.そのため,より厳密な電場解析がより正確なジェットの振る舞いを与える.
|
今後の研究の推進方策 |
単相ジェットに関する解析はほぼ終了したので,複合ジェットの解析に移る.原理的には,これまで行った解析手法を用いることができるが,コア部の解析に加え円筒部の解析を行う必要があり,さらに,崩壊形状を調べるための数値解析コードを新に作成する必要がある.
|
次年度の研究費の使用計画 |
解析に関しては理論解析に不十分な点が見つかり補強を行っていたため,当初に計画していた新たな数値解析のための計算機部品の導入が遅れた.また,全体的に研究の進捗が若干遅れており,当初予定していた成果発表のための学会出張ができなかった.このため,物品費および旅費が当初の予定よりも少なくなっている. 当該年度予定していたが使用できなかった計算機関連費と学会出張旅費は次年度使用の予定である.
|