研究課題/領域番号 |
24560196
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
柳瀬 眞一郎 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20135958)
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キーワード | 曲り管内流 / ラグランジュアンカオス / 流体混合 / 線形安定性 / 周期的進行波解 |
研究概要 |
矩形曲り管内流による物質混合の実験と数値計算を実行し,両者の比較を行った.今日,マイクロ流路による化学反応を伴う物質混合の実用的な装置の開発が望まれている.本研究では,矩形曲り管の2辺を一定速度で回転移動させると,低レイノルズ数状態では非常によい混合が実現されることが示された.その際,流れのディーン数は回転に伴うテイラー数の約10分の1以下である必要性が示された.実験では,曲がり管入口で着色した流体と着色しない流体が混合する様子をLIFにより観測した.一方数値計算はOpenFOAMを用いて行い,物質混合が発生する物理的原理が,ラグランジュアンカオスが生じるためであることが明らかとなった.流跡線を追うと,流体粒子が曲がり管内を管軸方向に何度も往復しながら混合していくことが示された.結果は混合率を計算することによりさらに定量的に明確化された.一方,矩形管の1辺を移動させた場合は,2辺を移動させた場合と比べ混合効率が低下することも調べられた.従って,現実的なモデルとしては,2辺を移動させる方法が最も効率的であることが予想される. 今年度は,より理論的な研究として,壁の移動を伴わない矩形曲り管内流を管軸方向に周期的であると仮定し,定常解,周期解,進行波解などを求め,それらの線形安定性を調べる解析を行った.その結果,多くの流れは3次元攪乱に対して不安定となり,周期的進行波解などが出現することが分かった.この研究においてはニュートン・ラフソン法にポアンカレ断面上の解析を組み合わせることにより,極めて効率的かつ包括的な計算が可能となった.本研究を基にして曲り管内流の乱流状態の解析を行うことが容易となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
壁が移動する曲り管内流では,実験と数値計算の一致が予想以上に目覚ましく,計算により実験で得られた流体混合の機構を説明することに成功した.一方,壁が移動しない曲がり管の理論的解析では,極めて効率的な数値計算スキームを完成することができ,非常に多様な流れを解析する枠組みを完成することができた.
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今後の研究の推進方策 |
壁を移動する曲り管内流では,矩形管の縦横比を変え,流体混合に対する最適化を行う.これにより,マイクロタス(超小型反応装置)の基本的な設計アイデアを完成し,実用化に近づける.一方,壁を移動しない曲り管内流では,より乱流的な流れを計算し,乱流への道筋を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
予定使用額よりも使用額が少なかった主な理由は,研究者が急病となったため,海外出張などの出張費が予定よりもはるかに少なかったことが主な理由である.また,実験的研究が予想以上に進展したため,比較的少ない出費で実験を終えることができたのも理由の一つである. 今年度は壁を移動する矩形管の縦横比を変化させて実験を行うための費用が発生する.また,乱流状態に至る計算を実行するための計算機を購入する費用を予定している.さらに,可能なら海外出張をして海外の最先端の研究状況を調査する.
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