研究実績の概要 |
今年度は,研究実績としては曲り矩形管内流において,管断面の縦横比を変化させたときの混合過程 を,LIFを用いた実験およびOpenFOAMによる数値計算によって調べた.その結果両者は非常によい 一致を見せたため,結果の正しさは保障された.さらにディーン数が,テイラー数の0.1倍よりも小さい場合,よい混合が実現されていることが確認された.またこの混合がラグランジュアンカオスによるものであることも確かめられた.管断面の縦横比を(1)正方形,(2)横長長方形(縦横比2.25),(3)縦長長方形(縦横比2.25)の3つの場合について調べた.その結果混合効率は,(3)が最も高く,次いで(1),(2)が最も低いことが実験・数値計算両面から示された.また,この混合には断面の2次渦の構造が大きく影響していることが特に数値計算結果を基にして明らかとなった.これを利用することにより化学反応に汎用に利用可能なマイクロタスの実現性が非常に高くなった.一方,マイクロバブルの影響を調べるための研究も進展した.断面が数ミリの管内への注入はまだ実現していないものの,その物理的・化学的性質はさまざまな研究によりかなり明らかとなり,特に疎水性物質の洗浄に対して非常に効率的であることが実験的に示された.また,現在この知見について特許を申請中である.今後は,これらの知見を基にして物質混合に対するマイクロバブルの影響,特に2次流れへのマイクロバブルまたはナノバブルの影響を調査することが緊急の課題となっている.以上の成果は,いくつかの国際会議で既に報告されている.さらに,これらの現象の数学的基礎となる確率過程に関する教科書を出版した.これが多くの研究者の便宜となることを願っている.今後は,まず,実用的なマイクロタスの開発を積極的に進める予定である.
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