研究課題/領域番号 |
24560201
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
金元 敏明 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90092642)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 海洋資源 / 再生可能エネルギー / 新エネルギー / 潮汐発電 / 潮流発電 |
研究概要 |
[潮汐発電]単一方向水車に関する従前の研究成果を踏まえて双方向流ランナを求め,基本特性と流れの状態を調べた.(1)双方向でも水力効率はほとんど変わらず,一方向専用機と同等な効率となる.(2)双方向ランナブレードでは反りを持たせないので,流れはブレードに迎え角を持って入り,ブレードに沿って流出することにより,角運動量変化すなわち出力を得る. [潮流発電]風車に関する従前からの蓄積技術に基づいて,水槽実験用のタンデムプロペラを設計製作した.これを用いた曳航水槽実験により次のような成果を得た.(1)出力はブレード取り付け角に依存し,今回の実験における最高出力係数は0.25 であったが,風車に比べて高レイノルズ数となるので,最高出力係数を与える周速比は速くなる.(2)発電ユニットをパイルに搭載すると,パイルにかかる軸方向抗力は流速の二乗に比例して増加する.(3)このとき,単段プロペラに比べて二段プロペラの方が,軸方向効力は大きいくなる.(4)しかし,好適な取り付け角のタンデムプロペラでは単段プロペラの軸方向抗力とさほどかわらなず小さく抑えることができる.(5)流れに対して垂直方向の力については,単段プロペラでは片側に隔たった力が生じるのに対し,タンデムプロペラはほぼ左右対称の力となり,両プロペラの相反回転トルクが相殺されてパイルに反作用が働かないことを確認した.(6)このとき,両プロペラの回転に起因する卓越周波数と,カルマン渦に起因する卓越周波数が生じている.(7)発電ユニット後方の水面造波は,パイルにかかる軸方向抗力に対応する.すなわち,振幅は流速の二乗に比例して増加し,発電ユニットの設置位置が深くなると波の振幅は小さくなる.(8)また,発電ユニットを1本のワイヤで係留できることも確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
潮汐発電,および潮流発電のパイル形式については当初の目標を達成している.係留方式の潮流発電についてはその可能性を確認したに止まっている.その主な理由は,(1)外部の曳航水槽を利用するので実験期間に限定がある.(2)プロペラの動バランスが幾分悪く,流体力以外の遠心力による振動が現れた.(3)潮流用としてのプロペラ形状の吟味不足であった. 以下に述べるように,次年度以降は,河川による実験,プロペラの再設計,再度曳航水槽による実験を計画しており,数値シミュレーション(CFD)と合わせて,今年度の多少の遅れは十二分に取り戻せる.
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今後の研究の推進方策 |
[潮汐発電](1)系統連系を視野に入れて,回転速度すなわち誘起周波数一定の下でオンカム運転を試みる.(2)CFD援用により出入口流路の最適化を図る.双方向となるため出入口ともディフューザ形式を考えているが,堰等のインフラ環境,干満差等によって設置条件が異なるので一律な形状提案は意味がない.したがって,円錐形状に止め,実用化に際しては設置場所ごとにCFDで対応する.(3)相反転方式では発電機も重要な役割を担うから,実用化に向けて,同期発電機,誘導発電機,コアレス発電機の設計指針も同時に提案する(小型軽量化,電気系統の封水機構,二重回転電機子およびスリップリングの材料選定などを含む). [潮流発電](1)潮流発電に適したプロペラ形状をCFDと実験から求める.このとき,プロペラに衝突する魚はほとんどいない(既報)ので,急激な圧力低下を避ける(気胞の破裂)ことと水中騒音の軽減に帰着し,ブレード面上の圧力がキーポイントとなる.前者の回避は直接キャビテーション問題にも連なる.(2)大容量機になればプロペラ径が大きくなる.キャビテーションは圧力に関係するから,プロペラブレードの回転位置および深度によってキャビテーションの状態が異なる.これについては当面,数値実験に頼り,潮流速度に対するプロペラ径,回転速度の許容限界を明らかにする.(3)相反転方式は1本のワイヤで係留できることが売りなので,子午面上でのモーメント中心でも係留策を講じて,判定した発電機能を生み出す.(4)また,潮流環境が変化するときのワイヤ/チェーンとプロペラの絡まりを回避する方策が必須である.現在,抗力,浮力,重量との関係を利用した名案を編み出しつつある.(5)最終的には,海藻(ゴミ)回避(除去)対策,腐食対策,耐久性向上,メンテナンス性向上,生物付着対策,電力輸送技術についても言及したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が発生した状況:プロペラの1回転中に1回首振り運動が確認された.羽根枚数と回転速度をかけ合わせた振動数とカルマン渦の卓越が普通であることから,この原因を探究したところ,プロペラの動バランスに問題のあることが判明した.そこで,新たなプロペラを準備して確実に動バランスを取るための費用を次年度に繰り越す必要が生じた. このことを踏まえて,上記の計画に従って概算で, 新たなプロペラの製作費:60万円,数値シミュレーションソフトレンタル料:30万円,河川での実験遂行費(宿泊,モデル部品等):20万円,動バランサー購入費:50万円,研究成果発表旅費:20万円 の使用を予定している.
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