細胞の持つ機能を積極的に利用する細胞治療は,骨髄移植をはじめとして確立された医療として幅広い研究がすすめられている.特に幹細胞研究の進展と共に適用可能疾患の拡大が期待され,それぞれの疾患に対応可能な新たな技術が求められている.将来のiPS細胞,ES細胞由来の細胞利用を視野に入れ,肝実質細胞を門脈経由で肝蔵内に移植する国内初の肝細胞移植治療(1)がおこなわれるなど細胞移植治療の研究が精力的にすすめられており,こうした細胞治療を安全かつ効果的な治療として高度化していくための細胞操作技術の革新が必要不可欠である.本研究では,細胞操作技術として,生細胞と死細胞の分離,未分化細胞やガン化細胞の除去,細胞の配置,捕獲,細胞や溶液の混合,遺伝子導入など,個々の細胞操作を,電場条件のみの制御で可能な先鋭電極に着目し,ナノ手術デバイスとして活用していくための基礎評価研究をおこなった.特に,細胞操作に積極的に活用可能な,交流電場印加下における先鋭電極近傍の細胞操作特性ならびに流動形成特性に着目し,詳細を明らかにした.特に電極近傍に形成される流動,ならびに細胞などの粒子の動きである粒動に着目し評価検討をおこない,当該技術の有効性を明らかにした.
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