研究課題/領域番号 |
24560204
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
脇本 辰郎 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10254385)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 界面活性剤 / 薄膜 / 表面張力 / サーモキャピラリー |
研究概要 |
平成24年度は実験装置を製作し,サーモキャピラリー効果による張力の付加と液膜厚さの測定が可能であることを示した.界面活性剤溶液に染料を添加し,作成した溶液薄膜にレーザーを照射して局所的な温度差を誘起した.温度差に伴う表面張力差(マランゴニ力)により膜は薄膜化され穿孔が生じた.また,レーザーの透過光量を計測して,温度上昇量,マランゴニ力,液膜厚さの推算が可能であることを示した.さらに,膜の上下面で反射する光を利用して干渉縞の画像を撮影し,膜厚の空間分布を可視化した.従来,極めて薄い活性剤膜に張力を加えて,その力学的特性を調べることは極めて困難であったが,本研究で提案する方法により,非接触で微小な張力を付加することが可能となった. 種々の活性剤溶液で測定を行ったところ,陰イオン性活性剤溶液では加熱中央部で膜厚が徐々に減少した後に穿孔するのに対して,非イオン性活性剤溶液では穿孔直前まで膜厚が維持されることがわかった. このような薄膜の安定化機構を調べるため,薄膜の流動の数値解析コードを作成した.気液界面の追跡にCIP法を用い,表面張力をCSF法で表現してマランゴニ力による液膜の流動をシミュレーションした.その結果,マランゴニ力による外向きの力により,加熱中心部が薄膜化して穿孔することがわかった.また,表面にのみ作用する非ニュートン性の粘性を作用させることにより,実験で得られた特異な液膜厚さの時間変化を表現できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サーモキャピラリー効果による界面活性剤溶液薄膜への張力の付加と液膜厚さの測定が実現されており,実験については概ね当初の目的が達成されていると考えている.数値解析についても概ね当初の予定どおりであるが,実験と同スケールの数値解析が計算負荷の点から困難であったため,計算可能な小さいスケールのシミュレーション結果を大スケールの実験と比較するための何らかのスケール変換則が必要となっている.当初の研究目的を達成するにはこの問題を解決する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
実験については,さらに多くの種類の界面活性剤を用い,溶液の濃度を変化させて液膜厚さの時間変化の測定を行う.また当初の計画通り,膜流動の速度をPIV法により測定する.数値解析については,「現在の達成度」でも記述したスケール変換則の問題を解決する.加熱範囲の大きさを変えた数値解析の結果などからスケール依存性を検討する予定である.また,表面粘性の他,活性剤分子の濃度勾配で発生する力を考慮した数値解析を行う.最後に計算結果と実験結果を比較し,活性剤溶液膜の安定化機構について考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
PIV測定を行うために高速カメラ,マクロ撮影レンズ,PIV解析ソフトウェアが必要であり,主にこれらの購入に研究費を使用する計画である.H25年度の直接経費の配分予定は140万円であるので,カメラ・レンズ等に70万円,PIV解析ソフトウェアに40万円,消耗品・旅費等に30万円程度の執行を計画している.
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