研究課題/領域番号 |
24560205
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
辻 知宏 高知工科大学, 工学部, 教授 (60309721)
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研究分担者 |
蝶野 成臣 高知工科大学, 工学部, 教授 (20155328)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 流体工学 / 非ニュートン流 / トライボロジー / 液晶 / 発電 |
研究概要 |
従来の研究成果において,液晶を流動させることにより液晶分子の配向場に歪を発生させ,液晶材料に巨視的な分極を発生させることが可能であることを見出した.本研究では,流動条件による液晶分極値の制御方法の最適化と液晶発電デバイスのプロトタイプの作成を通して,これまでにない全く新しい液晶デバイスを世に送り出すことを目的とする.液晶発電デバイスの最終形態として,発電機能を付与した液晶流体軸受けの開発を計画しており,昨今のエネルギー事情も鑑みて,実現の暁には広範囲な用途が期待できる. 本研究計画全体を通して,液晶発電システムの実用化にターゲットを絞って研究を行う.具体的には,回転軸の軸受けに液晶材料を用いた潤滑と発電を同時もしくは切り換えて行えるようなデバイスの開発を最終目的とする.その第一段階として,平成24年度はまず,2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発およびデータの収集を行った.得られた結果より,2重円筒間の液晶圧電効果の時間および空間スケールの解明を行い,実験装置の設計指針を得た.その後,2重円筒間液晶せん断流れ実験装置の設計および流路部分の試作を行った.この実験装置を用いて,平成25年度以降の研究を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,Leslie-Ericksen理論を用いた2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発を行い,液晶材料の物性値,2重円筒形状(円筒曲率および円筒間隔),せん断速度および円筒壁面における液晶分子の配向処理強度をパラメータとして,平行平板間せん断流れによる巨視的分極についての数値シミュレーションを行った.また,シミュレータには,GPU(Graphics Processing Unit)を用いた並列計算プログラムを用い,演算に要する時間の大幅な軽減に成功した.また,シミュレーション結果を基にして,実験装置および液晶材料の仕様の設計および2重円筒間液晶せん断流動発生装置の試作を行った.試作した2重円筒間液晶せん断流動発生装置を用いて,液晶流動実験及び巨視的分極値の計測を行ってみたところ,円筒を回転させるのに用いたモータや円筒の保持に用いたベアリングの摩擦等により,電気的ノイズが発生してしまい,本来の液晶による分極値が計測できないことが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
24年度の研究成果より,実験装置における電気的ノイズの問題が明らかとなったため,25年度は実験装置のノイズ対策から行う.具体的には,円筒を駆動するためのモータをファラデーケージで遮蔽すること考えているが,場合によっては,装置全体の見直しも視野に入れる必要がある.装置の完成後は,当初の計画通り,先ずは2重円筒間液晶せん断流れデータ収集を行う.具体的には,流動中の液晶をレーザー光源とフォトディテクタを用いて光学的に,同時に巨視的分極値をアンプで増幅しながら電気的に計測する.得られた結果より,流動による液晶分子配向挙動と,液晶分子配向場の歪みから生じる巨視的分極値の関係を明らかにする.さらに,シミュレーション結果との比較を行い,必要であれば実験装置およびシミュレーションプログラムに修正を加え,追加データの収集を行う.最終的に,液晶材料の発電特性および潤滑特性を最適にする利用条件(軸受け形状,流動条件,温度条件,液晶材料の物性)の同定を行い,次年度に計画している発電機能を有する液晶流体軸受けの試作へとつなげる.
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次年度の研究費の使用計画 |
先ずは,実験装置の電気的ノイズ対策のため,試作した実験装置の予算を割く必要がある.また,液晶流の中の分子配向挙動は温度に依存するため,実験装置の温度管理を行うサーモモジュールコントローラを購入する.また,液晶材料自身も分極の発生に関する重要なファクターであり,ディスプレイ用の液晶材料ではなく,発電装置に適した液晶材料を化学会社に合成依頼するための予算も計上している.
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