研究課題/領域番号 |
24560205
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
辻 知宏 高知工科大学, 工学部, 教授 (60309721)
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研究分担者 |
蝶野 成臣 高知工科大学, 工学部, 教授 (20155328)
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キーワード | 流体工学 / 非ニュートン流 / トライボロジー / 液晶 / 発電 |
研究概要 |
従来の研究成果において,液晶を流動させることにより液晶分子の配向場に歪を発生させ,液晶材料に巨視的な分極を発生させることが可能であることを見出した.本研究では,流動条件による液晶分極値の制御方法の最適化と液晶発電デバイスのプロトタイプの作成を通して,これまでにない全く新しい液晶デバイスを世に送り出すことを目的とする.液晶発電デバイスの最終形態として,発電機能を付与した液晶流体軸受けの開発を計画しており,昨今のエネルギー事情も鑑みて,実現の暁には広範囲な用途が期待できる. 本研究計画全体を通して,液晶発電システムの実用化にターゲットを絞って研究を行う.具体的には,回転軸の軸受けに液晶材料を用いた潤滑と発電を同時もしくは切り換えて行えるようなデバイスの開発を最終目的とする.その第一段階として,平成24年度はまず,2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発およびデータの収集を行った.得られた結果より,2重円筒間の液晶圧電効果の時間および空間スケールの解明を行い,実験装置の設計指針を得た.その後,2重円筒間液晶せん断流れ実験装置の設計および流路部分の試作を行った.平成25年度は,上述の実験装置全体を完成させ,2重円筒の内筒を回転させることによって液晶にせん断流れを与えた.さらに,液晶が流動しているときの内外円筒間の電圧を測定することによって,流動による液晶に生じる巨視的分極の実測に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はLeslie-Ericksen理論を用いた2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発を行い,液晶材料の物性値,2重円筒形状(円筒曲率および円筒間隔),せん断速度および円筒壁面における液晶分子の配向処理強度をパラメータとして,平行平板間せん断流れによる巨視的分極についての数値シミュレーションを行った.また,シミュレーション結果を基にして,実験装置および液晶材料の仕様の設計および2重円筒間液晶せん断流動発生装置の試作を行った.試作した2重円筒間液晶せん断流動発生装置を用いて,液晶流動実験及び巨視的分極値の計測を行ってみたところ,円筒を回転させるのに用いたモータや円筒の保持に用いたベアリングの摩擦等により,電気的ノイズが発生してしまい,本来の液晶による分極値が計測できないことが明らかとなった. そこで,本年度は,実験装置のノイズ対策を徹底して行うとともに,実験データからノイズを差し引けるように,実験装置の改良を行うことから始めた.すなわち,液晶を充填した2重円筒と空の2重円筒の同時計測を行い,電圧の差分を求めることで,液晶が発生する巨視的分極値の測定に成功した.しかし,実験装置の改良に時間を費やしてしまったため,液晶材料の違いによる発電特性および潤滑特性の解明には至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
25年度の成果により,2重円筒間液晶流動装置が完成し,実際に巨視的分極値の測定に成功した.しかし,これまでに2種類の液晶材料についてのみの実験しか行えていない.そこで,液晶材料の違いが巨視的分極値の関係に及ぼす影響を明らかにする.この実験結果と初年度に開発したシミュレータの計算結果を総合して液晶材料の発電特性および潤滑特性を最適にする利用条件(軸受け形状,流動条件,温度条件,液晶材料の物性)の同定を行う.その後,発電機能を有する液晶流体軸受けの設計および試作を行い,その性能評価を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は,初年度に試作した実験装置に生じた電気的ノイズの問題を解決するために実験装置の改良に時間を費やす必要があった.そのため,流動による巨視的分極に及ぼす液晶材料の違いによる影響を調べることができなかった.そのため,当初予定していた液晶材料の購入費用を26年度に繰り越すこととなった. 効率よく発電できる液晶材料の同定は液晶発電軸受の開発において重要な要因であり,本年度に必ず行う必要がある.そのため,繰り越し費用を液晶材料の購入に充てる.
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