従来の研究成果において,液晶を流動させることにより液晶分子の配向場に歪を発生させ,液晶材料に巨視的な分極を発生させることが可能であることを見出した.本研究では,流動条件による液晶分極値の制御方法の最適化と液晶発電デバイスのプロトタイプの作成を通して,これまでにない全く新しい液晶デバイスを世に送り出すことを目的とする.液晶発電デバイスの最終形態として,発電機能を付与した液晶流体軸受けの開発を計画しており,昨今のエネルギー事情も鑑みて,実現の暁には広範囲な用途が期待できる.本研究計画全体を通して,液晶発電システムの実用化にターゲットを絞って研究を行う.具体的には,回転軸の軸受けに液晶材料を用いた潤滑と発電を同時もしくは切り換えて行えるようなデバイスの開発を最終目的とする.その第一段階として,平成24年度はまず,2重円筒間液晶せん断流れのシミュレータの開発およびデータの収集を行った.得られた結果より,2重円筒間の液晶圧電効果の時間および空間スケールの解明を行い,実験装置の設計指針を得た.その後,2重円筒間液晶せん断流れ実験装置の設計および流路部分の試作を行った.平成25年度は,上述の実験装置全体を完成させ,2重円筒の内筒を回転させることによって液晶にせん断流れを与えた.さらに,液晶が流動しているときの内外円筒間の電圧を測定することによって,流動による液晶に生じる巨視的分極の実測に成功した.平成26年度は,前年の実験をさらに発展させ,実際の軸受けを想定し,軸の回転速度に対する分極電圧の精密測定を行い,約40mVの最大電圧が得られることを明らかにした.さらに,軸の回転速度が0.2rpmで最大電圧が得られるという液晶発電デバイス特性を明らかにした.
|