本年度では,研究の最終年度としてマイクロプラズマアクチュエータをNACA0012翼に取り付け,翼の後流を測定した.マイクロプラズマアクチュエータを駆動させ,熱線流速計により速度2成分の平均速度および乱れ強さを測定した.また昨年度までの結果から,直線形状のマイクロプラズマアクチュエータでは翼のはく離制御に及ぼす効果が小さいことがわかったので,翼面上に縦渦を誘起できる波型形状のマイクロプラズマアクチュエータを新たに開発し,それを用いて実験を行った.予備実験として,静止流体中で波形アクチュエータの山と谷の位置でのジェット挙動の可視化を行い,ジェットの衝突の様子や縦渦の誘起を確認した.翼面上での波型アクチュエータを設置した位置は,翼前縁から2mmおよび5mmの負圧面,後縁から 40mmの位置の正圧面を試した.翼迎角の範囲は0~4度とした.いずれの位置に波形マアクチュエータを設置した場合でも,平均速度および乱れ強さ分布に大きなはく離抑制の効果が見られる結果は得られなかった.このことは設定した主流流速に比して,マイクロプラズマアクチュエータからのジェット流速が約0.25m/sで5%程度と低かったため,と考えられる. 一方の目標であるプラズマアクチュエータの省電力化については,プラズマ電流のような非定常波形でも消費電力を測定可能なQ-Vリサージュ法による電力計測を計画通りに実施し,同寸法の通常のプラズマアクチュエータと比較して,消費電力の低減を確かめた.この点で目標を達成できたといえる.併せて,プラズマアクチュエータ駆動時に問題となるオゾンの発生量も,通常のプラズマアクチュエータよりも少ないことを確かめた. さらにこの波型マイクロプラズマアクチュエータを,流れ方向に複数段連ねた複合アクチュエータの開発を行っており,今後これを翼周り以外の流れ場,例えば境界層の制御等に応用する予定である.
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