本研究では,高シュミット数が特徴である液相における反応性乱流拡散場の統計的特性を明らかにすることを目的として,吸光スペクトル法による多成分濃度同時測定を行った。そのために,高空間・高時間分解能の多成分濃度測定システムの開発を行い,反応性乱流の微細構造を明らかにする。 まず,高時間・高空間分解能の2成分濃度同時測定システムの開発を行った。分解能を向上させるために検査体積を小型化したが,光量も減少するため,従来光源として用いられていたハロゲンランプでは,高精度な濃度測定は不可能である。そこで,光源として緑色と赤色の2つのレーザーダイオードモジュール(LDモジュール)を使用した,2成分の濃度測定システムを開発した。 次に上記の2成分濃度同時測定システムに,さらに1波長分,新たに青色のLDモジュールと分光系を購入することにより,3成分の濃度を同時測定可能なシステムにバージョンアップを行った。静止流体中で濃度測定の原理試験およびノイズの影響を調べ,濃度測定システムの有効性を確認した結果,誤差1%以内で3成分同時濃度測定が可能であることが確かめられた。さらに,3成分濃度同時測定システムを用いて,軸対称乱流噴流中の3成分濃度を同時測定した。その結果,3成分濃度の測定結果が全て一致しており,本測定システムの有効性が確かめられた。 また確率モデルとして,確率密度関数(PDF)法による反応性拡散場のモデリングを行った。平均せん断のない格子乱流中におけるマルチプルーム拡散場を対象とした数値計算を行った。この拡散場は断面方向に近似的に一様と見なすことが可能であり,モデル化が必要となる分子拡散モデルの評価に最適である。まず,IEMモデルを液相反応性乱流に適用し,単一の二次反応と連続競争反応の場合の計算を行い,実験と比較することにより,その有効性を検証した。
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