研究課題/領域番号 |
24560219
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
金野 満 茨城大学, 工学部, 教授 (90205576)
|
研究分担者 |
田中 光太郎 茨城大学, 工学部, 講師 (10455470)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ジメチルエーテル / 噴霧 / 高速度観察 / 詳細素反応モデル / 数値解析 |
研究概要 |
本研究はDME利用技術の根幹となる噴霧現象を超高速で詳細拡大観察し、その知見を基にDMEの特性を表現できる噴霧燃焼モデルを開発することを目的としている.初年度である平成24年度は、3年間の全体研究のうち、主として①超高速度光学観察の準備および②ノズル近傍の拡大観察に注力したが,③噴霧モデルの開発にも着手した. ①既存の定容燃焼システムを改造し,過給式実機関と同等の高温・高圧場(8.0MPa,850K)を形成することに成功した.また,申請した光学部品を用いて超高速度・拡大撮影の準備を整えた.半導体レーザを用いた吸光分光による噴霧内燃料濃度計測準備については,レーザの納入が年末に遅れたため,予定していた吸収線の圧力広がりに関するデータは取得できていないが,圧力セルを含めた計測系はある程度構築することができた. ②上記の定容燃焼システムを用い,過給機関相当雰囲気条件(8.0MPa,850K)および自然吸気機関相当雰囲気条件(4.5MPa,800K)におけるDME噴霧をφ4mmの観察視野,1,000,000コマ/sの高速度で撮影することに成功した.取得した噴霧画像の解析から,実機相当の雰囲気温度では,DMEの蒸発速度が分裂速度を上回るために,軽油噴霧のような分裂・液滴形成・蒸発の過程を辿らずに蒸発することを明らかにした. ③噴霧モデルは,分裂や蒸発を扱う物理モデルと化学反応を扱う反応モデルから構成されるが,今年度は反応モデルの開発に着手した.化学種数55,素反応式数290から成るZhaoらのDME酸化詳細素反応モデルをベースにした簡略化モデルの開発を行った.感度解析を行って主要反応式を選定し,簡略化の誤差修正のため一部反応速度定数を調整した.作成したモデルは化学種数29,素反応式数37に簡略化され,温度700~1500Kの範囲で着火遅れおよび主要中間生成物の濃度履歴をよく表現できた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,①超高速度光学観察の準備,②ノズル近傍の拡大観察,および③噴霧モデルの開発にも一部着手することを目標として研究に当たったが,いずれの項目についてもほぼ計画通りの成果を得ることができた. 世界で初めてDME噴霧の拡大・超高速度観察に成功し,DME噴霧では分裂過程を経ないで蒸発が進行すること等,新たな知見を得ることができた.また,次年度以降,噴霧モデルのターゲットデータとなる噴霧形状,到達距離,蒸発特性に関するデータも取得できた.半導体レーザを用いた吸光分光による噴霧内燃料濃度計測準備については,レーザの納入が年末に遅れたため,予定していた吸収線の圧力広がりに関するデータは取得できなかったが,基礎データ取得のための計測系もある程度作ることができ,次年度の早い時期に実験できる状況にある.噴霧モデルについても,簡略化反応モデルがほぼ出来上がり,DME噴霧燃焼の数値解析に適用できる見通しを得た.
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には,当初の計画通り,DME噴霧の超高速度・詳細観察を引き続き実施するとともに,半導体レーザ吸収分光法によるDME噴霧内濃度分布の計測および噴霧モデルの開発に取り組む. 今年度のノズル近傍の観察から,DME噴霧は分裂より蒸発が速いことが示されたが,このことを確かめるため,今年度観察を行ったノズル近傍の他に分裂が最も盛んに起きると考えられる分裂長さ近傍の超高速度・詳細観察を行う.また,今年度構築したレーザ吸収分光法計測系を用いて圧力広がりや干渉成分の影響に関する基礎分光データ取得を行う. 一方,噴霧モデルの開発については,一部予想していたように蒸発速度が分裂速度を上回ることが強く示唆されたことにより,分裂長さを基準としてKH分裂とRT分裂を競合させる従来の軽油モデルは適用できない可能性が出てきた.当面は軽油モデルをベースに噴霧観察結果と比較しながら,分裂長さ予測式の見直しや分裂定数の調整を行うが,予測精度が不十分な場合は分裂モデルの再検討や分裂自体を考慮しないモデルを検討する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究の遂行に必要な機器類はほぼ平成24年度に購入し,納入された.吸光分光に用いる半導体レーザの納入が遅れたことに伴って分光基礎データを取得する計測系が完成しておらず,このための費用等が「次年度使用額」644千円として生じた.次年度はDME噴霧内濃度分布測定のための分光計測系の構築のため,「次年度使用額」+当初予算150千円を使用する.この他,当初の使用計画通り,標準ガス・試料等の購入に30千円,今年度の成果を国内で発表するための旅費に140千円,研究補助者(大学院生)の謝金として180千円を使用する予定である.
|