研究課題/領域番号 |
24560220
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西岡 牧人 筑波大学, システム情報系, 教授 (70208148)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超希薄燃焼 / 旋回流 |
研究概要 |
平成24年度にはまず、購入した数値計算用サーバ上で軸対称二次元の詳細反応数値計算を行ない、旋回よどみ流バーナの最適形状および最適流速条件を探った。その結果、少なくとも数値計算上は、当量比0.40の定常なメタン空気超希薄予混合火炎の形成に成功した。そしてその内容は第50回燃焼シンポジウムで発表した。その計算結果に基づき、石英ガラス製の旋回よどみ流バーナを設計製作した。旋回流の生成には上流端において混合気を断面の接線方向に噴射する方法を用い、また衝突壁面については、第1段階としてとりあえず加熱しないままとした。このバーナを用いて実験を行なったところ、当量比0.45の超希薄燃焼を実現した。また、形成された火炎中のOH濃度分布をPLIF(平面レーザ誘起蛍光法)計測装置を用いて測定し、数値計算とのある程度の一致を見た。 しかし、実験においては完全に軸対称で定常な火炎は形成されず、非対称な火炎がクルクルと対称軸周りに回転する現象が観察された。これは予想外の現象で、これが生じる限り定常な詳細反応数値計算結果との比較が困難であり、超希薄燃焼メカニズムの解明には大きな障害となる。この現象は、ガラス製のラッパ型外壁部の固体内部の熱伝導と火炎との相互作用に起因する不安定性によるものと考えられ、火炎帯や既燃ガスと外壁が広範囲に接触するこのラッパ形状の外壁部を用いている限り、避けられない現象であると予想される。そこで、外壁部形状を当初のラッパ型から円すい台型に変更し、また平面状のよどみ板を、キャビティを持つ挿入式ホルダーに変更することに決定した。 新たな形状の旋回バーナの詳細反応数値計算は現在進行中であり、まだ定常な超希薄火炎の形成には成功していない。しかし火炎の変動はしだいに落ち着きつつあり、形成できる可能性は高い。今後、定常な火炎の形成に成功したら、それに基づき新たなバーナを設計製作する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一般にメタン空気燃焼の希薄可燃限界は当量比0.50前後と考えられているが、この1年間の研究で、当初の形状のバーナを用いて当量比0.45の超希薄燃焼を実験的に実現することができた。また、その火炎中のOH濃度分布をPLIF(平面レーザ誘起蛍光法)計測装置で測定することもできた。これらのことから、1年目の目的を70%程度は達成できたと自己評価できる。ただし、形成された火炎が非対称かつ非定常的であったため、詳細反応数値計算と対応させることが不可能であるということが、大きな問題点として浮上した。この現象の存在は当初想定していなかったものである。そのため、当初の計画である数値計算と実験の結果を詳細に比較することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
実験において非対称な火炎が対称軸周りに回転する現象は、ガラス製のラッパ状の外壁部の固体内部の熱伝導と火炎との相互作用に起因すると考えられるため、現在のバーナを用いている限り不可避であると可能性が高い。そこで今後、バーナ形状の抜本的な改造を行なう。即ち、外壁部形状を当初のラッパ型から円すい台型に変更し、また平面状のよどみ板を、キャビティを持つ挿入式ホルダーに変更する。この形状の場合、既燃ガスとともに未燃ガスが逆流することを防止する一方で、火炎帯や燃焼ガスが外壁に接触する面積を大幅に低減できるはずである。この新型バーナを用いて、定常な超希薄燃焼が実現可能かどうか実験と詳細反応数値計算の両方で確かめる。 当初の計画では2年目にはバーナ形状やサイズ、および流速やスワール数を様々に変化させた実験を行なう予定になっていたが、今回バーナ形状を抜本的に変えたことで大きな遅れが発生するおそれがある。しかし実験や数値計算を加速することで、できる限り遅れを取り戻す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り2台目の数値計算用サーバを購入し、数値計算をこれまでの2倍の速度で遂行する。また新しい形状のバーナの製作や、それを用いた実験のための燃料ガスや配管材料の購入も予定している。計画当初から、バーナ形状の変更がなくてもサイズ等を変えた多数個のバーナの製作を計画していたので、今回、形状変更により追加の製作費が新たに必要になったわけではない。数値計算と実験の補助者のための謝金の使用も、当初の計画通り予定している。
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