研究課題/領域番号 |
24560220
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西岡 牧人 筑波大学, システム情報系, 教授 (70208148)
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キーワード | 旋回流 / 超希薄燃焼 / メタン火炎 / 水素火炎 |
研究概要 |
平成25年度には旋回バーナの構成を、前年度行なった「ラッパ型ガラス管+キャビティ付き淀み平板」の組み合わせから、「円錐台型ガラス管+キャビティ付き挿入式ホルダ」の組み合わせに変更し、燃料がメタンの場合と水素の場合について実験を行なった。また、購入した数値計算用サーバを用いて、実験に対応させた軸対称二次元の詳細反応数値計算も実施した。水素火炎の実験においては、OHラジカルの二次元分布をPLIF(平面レーザ誘起蛍光法)装置を用いて測定した。また水素火炎からの自発光を観察する場合には、紫外域に感度を持つICCDカメラを用いた。 実験では、メタンの場合、ほぼ想定した通りの円錐形状の火炎の形成に成功し、最希薄当量比0.46を実現した。これは一般に認められている希薄可燃限界0.49以下の超希薄条件である。また水素の場合も希薄可燃限界0.10より希薄な最希薄当量比0.08を実現した。しかし水素の場合、軸方向に棒状に長く伸びた火炎や、下流が消えたV字形状の小さな火炎など、想定した形状ではないいびつな火炎であった。これらの実験結果は第51回燃焼シンポジウムで発表した。 一方数値計算では、火炎背後の再循環領域に未燃ガスが入り込んで消炎を引き起こし、実験で得られたような超希薄条件の火炎は実現できなかった。素反応レベルでの燃焼メカニズムの解明には詳細反応数値計算による現象の再現が不可欠であるため、現段階ではまだ超希薄燃焼メカニズムの解明には至っていない。 現在、新たな第三の形状のバーナの形状を考案し、数値計算によりその有効性を検証中である。このバーナはこれまで用いた二つの形状のバーナの折衷案であり、「挿入式ホルダ」の上流部を大きくして「淀み平板」に近い形状を持つようにしたものである。この新しい形状のバーナによる安定な火炎が数値計算で確認された場合、早急に装置の作成に取りかかり、実験を行なう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度のラッパ型バーナに引き続き、25年度は円錐台型バーナを用いても超希薄燃焼を実現できた。しかし目標としていた0.40(メタンの場合)以下の当量比は実現できず、やや不満が残る結果となった。また水素の場合は、超希薄燃焼は実現できたものの、火炎形状は想定していたものとかなり異なるものとなった。更に、数値計算では安定な火炎を形成できず、超希薄燃焼メカニズムの解明には至らなかった。これらのことから、二年目における目的の達成度は70%程度と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの二種類のバーナを用いた研究では、超希薄燃焼を実現できたという意味では当初の目的の一部を達成できたと言えるが、詳細反応数値計算による安定な火炎の形成に失敗したことから、超希薄燃焼メカニズムの解明については達成できていない。今後は後者を達成するため、二つのバーナの折衷案である第三の形状のバーナを作成する。このバーナ案では、これまで行なった数値計算により、安定な火炎が形成可能であることがほぼ確定している。今後、これまでと同様にメタンと水素を燃料として、流速やスワール数を様々に変えた実験と数値計算を行なう。 当初の計画では三年目にはプロパンや擬似バイオガスなどを用いた実験と計算を行なうことにしていた。しかしこれまでの遅れを勘案し、計画を変更して、三年目もメタンと水素の火炎のみを対象とする。プロパンの場合はルイス数が1より大きいため水素と逆の現象が起きることが想定されるが、水素を用いて小さなルイス数が超希薄火炎に与える効果を十分に解明できた場合、それからの類推で、プロパンの場合に起き得る現象は、ある程度推定できるはずである。 今後の研究で、実験と数値計算のどちらの場合も安定な超希薄燃焼が確実に実現できるバーナを提案することができれば、それは燃焼研究に対して大きな寄与となり、十分有意義である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の途中でバーナ形状を変更する必要が生じたので、新しいバーナが完成するまで実験を停止し、燃料の購入を待つことにした。そのため残額が発生した。 次年度に新しいバーナを作成し、その燃料の購入に充てる。前年度にやや実験が遅れたため、当初の次年度分と合わせて、より多くの実験を行なう。
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