26年度には、前年度までに得られた最希薄消炎限界より更に希薄な燃焼を目指し、「淀みホルダ付き円錐台型」のバーナ形状を「淀みホルダ付き急拡大型」に変更した。これはバーナのガラス管を円錐台型から24年度に用いた「ラッパ型」に近い形状に変更したものである。このバーナを用いて実験を行い、メタン空気火炎の場合0.467、水素空気火炎の場合0.080の最希薄当量比を得た。しかしこの値は前年度までの結果とほとんど違いがなく、結局急拡大型バーナは超希薄燃焼に特に有効ではないという結論に至った。続いてガラス管の後流の直線部の径を約1/2に小型化し、再循環領域を小さくして輻射損失の抑制を試みた。なお実験は淀みホルダを用いずに行った。実験の結果、淀みホルダが存在せず再循環領域に未燃ガスが混入して温度低下をもたらす可能性が高いにもかかわらず、メタン空気火炎の場合0.465、水素空気火炎の場合0.085の最希薄当量比を得た。特に水素火炎の場合、微小重力環境での希薄可燃限界付近で観察されるFlame ballと類似した火炎が旋回流中に安定に形成されることを確認した。同時に水素空気旋回火炎の詳細反応数値計算も行い、実験と同様な火炎が形成されることを確認した。そしてその火炎において、いわゆるルイス数効果の一つである拡散熱的不均衡が活発に生じていることを明らかにした。 3年間の研究期間で、「淀み板付きラッパ型」「淀みホルダ付き円錐台型」「淀みホルダ付き急拡大型」「淀みホルダ無し円錐台型」の4種類のバーナを用いてメタン空気と水素空気の超希薄燃焼を試み、いずれのバーナにおいても成功した。またラッパ型バーナの火炎の詳細反応数値計算においては、燃焼ガスの逆流と未燃ガスが対向する火炎先端において回転対向流双子火炎と同じ火炎構造が得られ、超希薄燃焼を可能ならしめているのは正味流束不均衡である可能性が示唆された。
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