本研究では燃機関から排出される粒子状物質の酸化機構を解明するために,燃焼機関からの排出ガス中の粒子状物質の微細構造を把握した上で,これを衝撃波管に導き,広範な雰囲気条件下で衝撃波加熱し,その酸化速度を計測する. 製作した計測システムにより得られた微粒子酸化速度は従来研究における値に対し数百倍程度である.衝撃波加熱後の微粒子の酸化は加熱直後に急激に進むがその後酸化が止まる.このため,固体微粒子表面での酸化反応が拡散律速に至った可能性がある.これを確認し,測定された酸化速度の測定値の信頼性を検証するため,衝撃波加熱中の微粒子をミリ秒オーダーの期間で高速サンプルする装置を新たに製作し,これを用いて加熱途中の微粒子を採取し,電子顕微鏡で観察した結果,衝撃波により微粒子凝集体が分離していることを明らかにした.この分離を考慮した酸化速度測定値の補正をこなった.さらに,単一微粒子の酸化過程を,エネルギー保存式,質量保存式,反応モデルを連成させ解析する数値計算プログラムを新たに作成し,球対象1次元場における数値解析を実施し,従来モデルであるNSCモデルとNehoモデルでは酸化速度を過小評価することを明らかにした.また,排気管から直接サンプルした微粒子の微細構造を透過型電子顕微鏡で撮影観察し,機関運転条件が微細構造に与える影響を調べた.燃料噴射圧力を90 - 150 MPa,EGR率を30 - 50%の範囲で変化させ計測した結果,燃料噴射圧力の増加に伴い一次粒子径と旋回半径は減少すること,EGR率の増加に伴い,一次粒子径は減少し,旋回半径,一次粒子数,フラクタル次元は増加すること,燃料噴射圧力とEGR率を変化させても一次粒子内部の層長さ,層曲率,層間隔はほとんど変わらないことなどを明らかにした.
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