研究課題
効率向上が高温水蒸気の付与によってのみ引き起こされるのかを確認する必要があるため、前年度製作した小型実験装置(炉)を用いて、付与する水分量などの主要パラメータを変化させて実験を行い、燃焼場近傍の温度分布や熱流束分布、加熱対象の温度分布測定など、データの積み上げを行った。実証実験による温度測定など更なるデータの積み上げとともに、高温水蒸気の付与が対流熱伝達・ふく射熱伝達の複合伝熱にどのように寄与しているのか数値解析的に評価することが課題となっているが、ふく射伝熱は、熱伝導、対流熱伝達と複合して観察されることが多く、実験で計測することは困難であるため、ふく射伝熱解析が有効である。ふく射伝熱解析を行う上では、対象の物体や流体のふく射物性の扱いが重要であるが、ふく射物性の波長依存性を考慮した複合伝熱解析はあまり行われていない。そこで、ふく射物性の波長依存性を考慮した高温場でのふく射・対流複合伝熱解析を行った。熱伝達の促進には対流熱伝達、ふく射伝熱同士の相互作用が重要であるため、前年度に開発した、燃焼が起きている高温場に適用できるふく射・対流複合伝熱解析コードを用いて、複合伝熱場の解析を購入予定のワークステーションで大規模に行い、伝熱促進の支配因子を検討した結果、実験同様に、装置内に導入される水蒸気の総量(燃焼用空気に含まれる水蒸気および水供給機構で供給される水分由来の水蒸気の和)に適切な値が存在することが分かった。
2: おおむね順調に進展している
過熱水蒸気を単純な機構によって供給することができることを確認し、供給する水蒸気は燃料の燃焼に由来する水蒸気より1桁オーダーが小さいこと、燃焼用空気に含まれる水蒸気量とともに注意深く制御する必要性があることが分かった。解析コードの運用では、研究室所有の計算コードを発展させ、高温場でのふく射伝熱解析を行うことができ、今後のパラメータスタディに有効であることが確認できた。
小型実験装置での実験による実証および現象の理論的解明が進めば、エネルギー使用合理化技術を用いた装置の構築に向け、中型実証実験装置を製作し、その性能評価を行う予定で、小型・中型の違いによるスケール効果が生じる恐れがある。高温水蒸気を用いた伝熱促進機構を中型実験装置においても実現するため、設計・製作の指針として役立つ、ふく射・対流複合伝熱解析を行う。本研究で構築を目指す高温水蒸気を用いた伝熱促進技術は、エネルギー源としてガス・重油を用いる工業炉への適用が当面主となるが、坩堝(釜)(または過熱対象物体)と、発熱源に空間をもつ炉(例えば電気炉)や加熱器具その他への適用によるエネルギー効率改善にも繋がることが期待できる。そこで、燃焼以外の加熱機構への応用を目指して、伝熱促進技術の適用可能性を数値解析によって評価する。特に、燃焼現象を伴わない場合二酸化炭素量は減少するため、伝熱促進機構がその影響を受けるのかどうか評価を行う。
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International Journal of Aerospace and Lightweight Structures (IJALS)
巻: Vol.3, No.3 ページ: 373-384