研究課題/領域番号 |
24560223
|
研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
赤堀 匡俊 釧路工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (10303182)
|
キーワード | 熱工学 / 誘電体物性 / マイクロ波加熱 |
研究概要 |
本研究では,多重反射を含むキャビティ内のマイクロ波加熱に対し,(A)加熱物体内における電磁波干渉および反射波抑制による加熱特性の高効率化,(B)電磁波干渉制御および熱拡散効果を利用した熱的制御による加熱物体の温度均一化,(C)誘電特性が急激に変化する相変化過程の最適化,を研究対象として,(1)被加熱物体内における電磁波干渉の制御,(2)被加熱物体の表面および内部構造による反射波の制御,(3)高加熱物体の熱拡散を利用した熱的制御,に基づくマイクロ波加熱の高効率化および被加熱試料の温度均一化の最適化手法を提案することを目的としている. 平成25年度は,研究項目(B)電磁波干渉制御および熱拡散効果を利用した熱的制御による加熱物体の温度均一化を理論的に検討した.具体的には,加熱物体内の温度均一化に対して,(1)位相制御用補助物体および反射板の設置による電磁波モードおよび電磁場干渉を制御する手法,(2)加熱補助物体から加熱物体への熱伝導効果を利用した熱的制御法を検討した.以下に検討事項を示す. 1.位相制御補助物体および反射板を設置した場合の電磁波モードの変化や電磁波干渉状態を,誘電物性,補助物体の厚さおよび設置位置と関連づけて検討し,同一強度のマイクロ波に対する最大加熱量を理論的に明らかにした.また,電磁波の干渉制御による温度均一化手法を検討した. 2.加熱補助として高加熱物体を付加した場合のマイクロ波加熱における熱伝導の効果を,補助物体の厚さおよび設置位置と関連づけて検討し,同一強度のマイクロ波に対する最大加熱量を理論的に明らかにした.また,加熱補助物体からの熱拡散を利用した温度均一化の手法を検討した. 3.透過波と反射波の制御に加えて熱伝導効果を複合的に捉え,最大加熱量および温度均一化に対する補助物体の誘電物性,厚さおよび設置位置の影響を三次元TEモードのもとで理論的に検討した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの研究計画の達成度はやや遅れぎみである.研究計画で予定していた「反射波制御用補助物体の表面形状変化による反射波の抑制法」の検討について,平成25年度までに研究成果を得ることができなかった.これは表面構造の効果を検討する上で必要となる誘電物性や表面形状などのパラメーターが多く,すべての効果を検討するには至らなかった.現在,表面構造を用いた反射波抑制法について研究を成し遂げるべく,キャビティ内のマイクロ波加熱に及ぼす表面形状の影響を,誘電物性,補助物体の厚さ,設置位置および表面構造パラメーターと関連づけて解析的・実験的に明らかにするとともに,同一強度のマイクロ波に対する最大加熱量を理論的に検討している.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,反射波制御用補助物体の表面形状変化による反射波の抑制法の検討に加えて,研究項目(C)誘電特性が急激に変化する相変化過程の最適化を検討する.具体的には,マイクロ波による木材の乾燥過程や冷凍食品の融解過程を対象に,マイクロ波加熱の有する内部加熱および選択的加熱の特性を利用して,誘電物性が急激に変化する場合の加熱特性の最適化を検討する。以下に検討事項を示す. (C-1)マイクロ波加熱による乾燥では,乾燥速度の低下と乾燥域の温度上昇という通常乾燥の2つの克服課題に対し,マイクロ波加熱の有する選択加熱と内部加熱の特性を利用して,乾燥域の温度上昇を抑えた高い乾燥速度を維持することが可能となる。本研究では,相変化により誘電物性が急激に変化する場合の加熱特性の最適化を目的として,水分の乾燥により時間的に誘電物性が変化する乾燥過程に適用し,反射板の局部的な設置によるマイクロ波干渉制御の有効性を明らかにする。 (C-2)マイクロ波加熱による融解では,氷の一部が融解して水になると,水は氷と同じ分子構造を持つにもかかわらず氷に比べて約450倍もの誘電損を有するため,マイクロ波の吸収はほとんど水相で生じることとなる。このため,融解により生じた水は急激な温度上昇を示すことになるが,氷はほとんど温度上昇を示さず,物体内の温度不均一の原因となる。本研究では,氷の融解により時間的に誘電物性が急激に変化する融解過程の加熱特性の最適化および温度均一化を目的として,被加熱物体内の電磁場干渉制御を用いて融解水発生位置の制御を試みる。次に,融解水を利用した電磁場の干渉制御による加熱特性の有効性を被加熱物体や融解水の位置および構造に関連づけて明らかにするとともに,融解水から被加熱物体への熱拡散による加熱効果の高効率化および最適化を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度,大学から釧路工業高等専門学校に異動したため,研究室の立ち上げからスタートしなければならず,平成24年度に実施計画書で予定していた物品購入に遅れが生じてしまった.そのため,平成25年度に入っても,物品購入等の発注などが遅延気味になり,2年連続で次年度使用額が生じてしまった. 研究計画としては若干の遅れはあるものの概ね計画書の通りに進んでいる.平成26年度は研究計画の最終年度となるため,実施計画書の通りに提案した研究が成し遂げられるよう,適切な時期に物品購入を行っていく予定である.
|