本研究では,多重反射を含むキャビティ内のマイクロ波加熱に対し,(A)加熱物体内における電磁波干渉および反射波抑制による加熱特性の高効率化,(B)電磁波干渉制御および熱拡散効果を利用した熱的制御による加熱物体の温度均一化,(C)誘電特性が急激に変化する相変化過程の最適化,を研究対象として,(1)被加熱物体内における電磁波干渉の制御,(2)被加熱物体の表面および内部構造による反射波の制御,(3)高加熱物体の熱拡散を利用した熱的制御,に基づくマイクロ波加熱の高効率化および被加熱試料の温度均一化の最適化手法を提案することを目的としている. 平成26年度は,反射波制御用補助物体の表面形状変化による反射波の抑制法の検討に加えて,研究項目(C)誘電特性が急激に変化する相変化過程の最適化を検討した.具体的には,マイクロ波による木材の乾燥過程を対象に,マイクロ波加熱の有する内部加熱および選択的加熱の特性を利用して,誘電物性が急激に変化する場合の加熱特性の最適化を検討し,以下の成果を得た. 1.補助物体を設置して透過波の位相を制御した場合の透過波と反射波の干渉状態,および,キャビティ内のマイクロ波加熱に及ぼす表面形状の影響を,誘電物性,補助物体の厚さ,設置位置および表面構造パラメーターと関連づけて解析的に明らかにし,同一強度のマイクロ波に対する最大加熱量を理論的に明らかにした. 2.外部流を含む粒子層内の非等温気・液二相流れと電磁場・熱解析を組み合わせた乾燥モデルを提案し,マイクロ波加熱の特長である選択的加熱と内部加熱の効果により,乾燥域の温度上昇を抑えた乾燥過程を明らかにするとともに,乾燥の進行にともなう層内の水分分布の変化により誘電特性が急激に変化するため,マイクロ波の透過波と反射波の干渉状態が複雑に局所的に変化し,乾燥速度および物体内の温度分布が周期性を有することを明らかにした.
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