研究課題/領域番号 |
24560226
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
手崎 衆 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (50236965)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 圧縮自着火 / 反応機構 / 着火制御 / サロゲート燃料 |
研究概要 |
24年度は、改造設計の再検討と並行して既存装置での残件データ取得と解析作業を行った。 予混合圧縮着火時の冷炎-熱炎二段階着火過程における冷炎での反応進行度と冷炎-熱炎間に存在する中間生成物の測定結果が得られている。燃料系としてPRF、すなわちノルマルヘプタン/イソオクタン混合燃料と、NTFと称するノルマルヘプタン/トルエン混合燃料との二種類を用い、それぞれの混合比を変えることで着火特性を変えて冷炎燃料消費と生成物収率の関係を調べた。両燃料系に共通の傾向として、高オクタン成分であるイソオクタン又はトルエンの率を高めることで冷炎熱発生量の低下、元燃料消費率の低下がみられるが、PRFでは混合率の全域で変化が直線的であるのに対し、NTFではトルエン0-60%の間では直線的でPRFよりも変化が緩いが、60%以上で急速に変化して80%で着火しなくなる。 冷炎反応はOHラジカルを連鎖担体として、元燃料炭化水素がOHと反応してラジカル化、その後一連の反応を経てOHラジカルを再生する過程であり、OH再生係数が1以上であることにより連鎖反応が開始するが、燃料消費とアルデヒドによるOH消費によって1を割り込む条件で冷炎反応が停止する。PRFの場合イソオクタンはノルマルプロパンと同程度の割合で消費する。イソオクタンはノルマルヘプタンよりも小さいながら1を超えるOH再生率を持つので、イソオクタン率100%近くでも自着火可能であり、混合率変化に対する特性変化は一貫して連続的である。ところがトルエンはOHとの反応係数が小さいことで消費率も小さく、60%程度まではヘプタンの着火特性に与える影響は比較的小さい。だがトルエン自身のOH再生係数がほぼ0であるため、70%程度を超えると当初から冷炎の連鎖反応が生じない条件に移行する。以上の両燃料系の特性際に対しその理由を明らかにしたのは本研究の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高速に開閉するサンプリングバルブをエンジンヘッドに備え、定常的に排気する差動排気系を通して高真空の分析チャンバーで成分分析を行う既存装置に対して、差動二段目にシャッターを組み込んでサンプリングバルブとシンクロ動作するように改造することで検出精度、特に不安定な過渡成分に対する感度向上を狙うのが本研究の主目的であるが、24年度研究を開始する直前に既存装置が不調となり、従来技術でも測定不能となった。その原因追求と修理のため24年度の大半を費やしたためやや遅れている状況となっている。 不調の原因の一つは長年使用によるパルスバルブの開閉不良であり、用いていたバルブ製品が製造中止となっていたことから、新タイプのバルブを選定し、寸法形状が前と異なることからエンジンヘッドに取り付けるためのパーツを新設計・製作して対応した。 もう一つは高真空の質量分析チャンバー内の汚染と分析菅、すなわちイオン検出する二次電子増倍管の寿命により感度低下したものであり、洗浄と部品交換で対応した。部分酸化した炭化水素成分を、質量分析器にとっては大量に与えられることにより、通常の質量分析器よりも劣化が速いものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
5年度は、シンクロアクチュエータ機構を組み立て、試験運転、機構の調整と最適サンプリングの条件設定を行う。差動排気系において中間真空室へのガス導入を電磁高速バルブ、中間真空室と高真空分析室との間を従来のオリフィスと手動バルブだったものを高速電子シャッターとし、且つバルブが吹出すガス流れが近接して直接シャッター開閉部に当たる構造とする。ガス源は本来単気筒エンジンであるが、試験用にはシリンダーからの高圧ガスとし、ガス種・ガス圧力およびバルブ・シャッターの開閉タイミングと各真空室の圧力上昇、高真空分析室へのガス導入量との関係について基本的・系統的な計測データを取得する。特にバルブ吹き出しガス成分の特定タイミング成分をシャッターで切り出す条件に付いて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
シンクロアクチュエータ機構の組み立てを遅らせたことから24年度の当初予算のかなりの割合を持ち越した。25年度はその残予算と25年度に割り当てられた予算を用いて、先ずシンクロアクチュエータ機構の主要部品である高速電磁パルプと高速シャッターの購入、専用チャンバーの製作、組み合わせる高圧および真空配管部品、真空測定装置の購入に充てる。
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