研究課題/領域番号 |
24560229
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
廣田 真史 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30208889)
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キーワード | 気液二相流 / 熱交換器 / 分配 / 冷媒 |
研究概要 |
平成25年度は,水平ヘッダ・鉛直下降多分岐管において,冷媒チューブを断熱した状態と加熱した状態で冷媒気液二相流の可視化実験を行い,冷媒の沸騰が流路内の流動に与える影響を検討するとともに,冷媒チューブの温度履歴に基づき冷媒チューブへの液分配状態を推定した.また,断熱系空気-水系二相流による気液分配率測定を行い,冷媒二相流で推定された液分配状態との整合性を検討した. 試験流路は,透明PC製水平ヘッダ間にアルミ製微細多孔管が並列接続された構造をもつ.加熱系実験では,冷媒チューブに密着させた銅ブロック内に温水を循環し冷媒を蒸発させながら流れの可視化観察を行うとともに,定常状態に到達後に温水循環停止させ,温度下降率の測定結果から液冷媒の分配状態を推定した.空気‐水系二相流の実験では,ヘッダ入口の空気と水の流入見かけ速度を,冷媒の流入見かけ速度,運動エネルギー,あるいはBaker線図パラメータと一致するように設定し,各設定条件で気液分配率を測定した. 加熱系冷媒二相流では,上流域に位置する冷媒チューブから上流側ヘッダ内へ冷媒蒸気が逆流し,ヘッダ内に流入する冷媒の流れと干渉する様子が観察された.しかし,液冷媒の到達位置は断熱系冷媒二相流の場合とほぼ一致した.また,温水循環停止後の温度履歴からチューブへの分配状況を推定したところ,液冷媒は冷媒循環量が低い場合は上流側チューブに偏って分配されるが,冷媒循環量の増加に伴い下流域のチューブにも分配されるようになることが明らかになった.こうした加熱系冷媒二相流における液分配特性は,ヘッダ入口における見かけ流速を一致させた条件で測定された空気-水系二相流における液分配率の測定結果と整合していた.これらの結果を踏まえた上で,断熱系冷媒気液二相流において各チューブにおける冷媒の気相(蒸気)と液相の分配率を測定する実験装置の設計と製作を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,水平ヘッダ・鉛直下降分岐管の形態において多分岐管の冷媒チューブにおける冷媒の蒸発の影響が気液分配に及ぼす影響を明らかにし,従来断熱系で行われていた実験の合理性について検証した.また,加熱系冷媒二相流における気液分配状況を模擬できる空気-水二相流の流入条件を明らかにすることで,実験が容易な空気-水二相流により冷媒二相流の気液分配特性を再現する手法を検討した.この流動形態においては,冷媒を蒸発させた場合,上流域に位置する冷媒チューブから上流側ヘッダ内へ冷媒蒸気が逆流・噴出しヘッダ内に流入する冷媒の流れと干渉するが,液冷媒の到達位置は断熱系冷媒二相流の場合とほぼ一致することを見いだした.また,従来の研究では,ヘッダ入口において冷媒と空気-水のBaker線図パラメータを一致させることで空気-水二相流により冷媒二相流における気液分配状態を再現できると考えられていたが,本研究結果から鉛直下降分岐管の場合には,冷媒と空気-水の見かけ速度を一致させる必要があることが明らかになった.これらの結果を踏まえた上で,断熱系冷媒気液二相流において各チューブにおける冷媒の気相および液相分配率を測定する実験装置の設計と製作を実施し,装置の健全性をチェックするための試運転を実施した.以上の結果を得たことから,平成25年度の目的とした事項は達成されており研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,今年度開発した実験装置を用いて,まず断熱系冷媒二相流において各冷媒チューブへ分配される気相と液相の質量流量の測定を実施する予定である.試験流路は,実際に使用されるコンパクト熱交換器の仕様に近い直線ヘッダに22本のアルミ製微細多孔管が接続された多分岐管とし,気液分配率の測定と同時に流動状態の可視化観察も実施する.また,従来の実験装置では,サイクル上の制約から冷媒循環量が比較的少ない条件(毎時10kg以下)で実験を行ってきたが,冷媒循環量を大幅に増加(毎時50kg程度)できるように装置を改造し,冷媒のヘッダ流入速度が気液分配特性に及ぼす影響についてもより広範な条件において検討することを計画している.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は,各冷媒チューブから排出される気液二相状態の冷媒を冷却し液冷媒の状態で分配率を測定する計画であり,冷媒の液化装置の費用を見込んでいたが,実際には冷媒を加熱し蒸気で分配率を測定する手法に変更したため,この液化装置の製作費用が削減された. 研究費は,冷媒系気液二相流において冷媒循環量を増加させるために必要な冷媒循環ループの製作費用,試験流路の製作費用,およびガス冷媒用流量計,加熱水用流量計,熱交換器など測定機器の購入費用として使用する予定である.
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