固体高分子形燃料電池(PEFC)は、自動車用動力源や定置型分散電源等として実用化が進められているが、本格的普及に向けて解決すべき技術的課題は未だ多い。中でも、「フラッディング現象」や「ドライアウト現象」等の水分管理の問題は極めて深刻であり、これらの問題を解決するためには、PEFC内部で生じている水分移動や反応メカニズムを包括的に解明するための計測評価技術の確立が必要不可欠となる。そこで本研究では、光ファイバ型のキャビティ・リングダウン分光法(CRDS)を応用することにより、燃料電池ガス流路内の水蒸気濃度をin-lineでモニタリング可能なレーザ分光計測システムを開発することを目的とした。さらに、多孔質構造を考慮したガス拡散電極内の水分・酸素輸送数値シミュレーションを援用することにより、カソード電極内における液水挙動や酸素拡散現象の解明を試みた。 平成24~25年度は、「光ファイバ型CRDS水分濃度計測システム」の開発を行い、発電モードPEFCのカソード排ガス中に含まれる水蒸気濃度の定量測定を試みた。その結果、電池の出力電流密度の上昇に伴って、カソード排ガス中の水蒸気濃度が次第に増加していく傾向が確認でき、光ファイバ型CRDSの導入により燃料電池内の水分輸送現象を捉えることが可能であることが示された。 平成26年度は、多孔質構造を考慮したガス拡散電極内の水分・酸素輸送モデルを構築し、数値シミュレーションを援用することにより、測定が困難なPEFCカソード電極内における凝縮水の毛管現象および酸素の拡散挙動の解析を行った。その結果、セパレータのLand下部において多量の液水が貯留し、酸素の拡散が阻害されることが明らかになった。また、カソード側GDLに貫通穴を設けることによって液水の排出が促進され、フラッディングの抑制に効果的であることが示された。
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