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2012 年度 実施状況報告書

微細構造を有する沸騰伝熱促進面による高熱負荷対応小温度差熱交換に関する基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 24560233
研究種目

基盤研究(C)

研究機関神戸大学

研究代表者

浅野 等  神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10260647)

研究分担者 杉本 勝美  神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40420468)
竹中 信幸  神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50171658)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード強制対流沸騰 / 核沸騰 / 伝熱促進 / 限界熱流束 / 溶射皮膜 / ボイド率 / 静電容量
研究概要

電子機器や電力機器の冷却,さらには排熱利用など熱利用効率の向上のためには小温度差での熱交換技術が必要であり,沸騰伝熱促進が求められる.研究代表者らは溶射加工で製作した多孔質伝熱面で核沸騰領域において平滑面に対し約10倍の伝熱促進効果が得られることを狭隘流路内熱伝達実験で明らかにした.しかし,乾き度0.6から0.7において熱伝達率が大きく低下する現象が確認された.熱伝達率は低下後も平滑面と同等もしくはそれ以上の値であったことから熱伝達率低下要因がドライアウトでなく,強制対流蒸発への推移によると考えた.実用上,この熱伝達低下要因の解明と発生条件を明らかにする必要があることから,沸騰様式を明らかにするためボイド率の時間変化を計測した.作動流体が電気伝導度が低いFC72であることから,静電容量法を選択したが,誘電率も低いことから超高感度静電容量変換器を購入した.
試験部は狭隘流路片面加熱で,水平配置・底面加熱とした.上部壁面にセンサー電極を設置,加熱面をアース電極として,流路の静電容量を計測した.検出器の分解能,誘電率を考慮し,センサー電極を設計するとともに,ノイズ低減のためシールド電極を設置した.平成24年度は計測点を加熱部最下流の壁温計測点とし,熱伝達率とボイド率の相関を評価した.作動流体の質量流束を一定とし,試験部の熱流束を変化させ,同じ乾き度の流れに対して非加熱を含めて熱流束の影響を評価した.
実験結果より,溶射皮膜面の場合,乾き度が約0.4の流動条件では,加熱によってボイド率は高くなったが,熱流束の増大に対して極大値が存在し,それ以上の熱流束ではボイド率が低下した.ボイド率の上昇は液膜流での核沸騰による液の加速と考えられるが,高熱流束では流路中央部での沸騰の促進により,液が流路の両端に偏流したためボイド率が低下したと考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は,溶射皮膜による核沸騰伝熱促進面における沸騰現象の解明,特に,高乾き度強制対流での伝熱促進効果の低下,サブクール沸騰での限界熱流束向上効果を対象としている.いずれも流動形態に依存すると考えられるが,壁面を透明素材とした流動挙動の観察だけでは,膜厚方向の気泡および液膜構造の把握に対して不十分であった.研究対象の条件では沸騰現象は核沸騰支配であり,その場合,気泡の生成によって界面積濃度は高くなり液が加速されると考えられる.高乾き度の条件では液膜流内で核沸騰が得られるので,液膜を加速するとともに液滴飛散の増大につながる恐れがある.特に,溶射加工面では平滑面に対して高い熱伝達が得られていることから,その傾向が大きいと想定される.一方,サブクール沸騰の場合,溶射加工面では高熱流束条件でも沸騰気泡の合体による大気泡の形成が平滑面よりもされにくいため限界熱流束が向上したと考えられる.
高乾き度飽和沸騰,サブクール沸騰,いずれの場合においても,平滑面と溶射加工面では同じ熱流動条件に対してボイド率特性の把握が現象解明の鍵であることから,ボイド率計測法の確立が重要課題であった.平成24年度は,静電容量法によるボイド率計測が可能であることを示し,強制対流沸騰での計測を実現したことから現在の達成度は,概ね順調に進展しているとした.

今後の研究の推進方策

ボイド率計測手法の高度化を進めるとともに計測対象を拡大し,沸騰現象の解明につなげる.研究課題を以下に列挙する.
ボイド率計測手法の高度化. 平成24年度では,センサ電極の幅を流路幅(20 mm)と等しくして,流路全体の平均ボイド率を計測した.高熱流束では液の偏流によると推察されるボイド率の低下があった.流路中央の沸騰部での液膜状態,ドライアウトの有無を明らかにするため,流路中央局所を計測可能な小型センサを製作し,計測する.電極面積が小さくなるのでS/Nが低下すると想定されることから,ノイズ対策が問題なる.シールド電極の配置を工夫するとともに,S/Nの状況に応じて流動方向の計測範囲を検討する.
計測対象の拡大. 平成24年度の実験では,高乾き度における溶射加工面での伝熱劣化は確認されなかった.従来の研究で伝熱劣化が確認されたのは冷媒にHCFC123を使用した場合で,FC72と異なるためと考えられる.FC72での強制対流蒸発を実現するため,流量範囲を大きく,そして加熱容量を増大させるように実験装置を改造し,乾き度の設定範囲を拡大する.一方,サブクール沸騰に対しても同様の手法でボイド率の時間変化を計測する.

次年度の研究費の使用計画

流量範囲の拡大,そして加熱容量を増大のための実験装置の改造および研究成果の発表のための講演会参加旅費として使用する.二相流の専門家会議での発表を通して,計測手法および計測結果の意見交換を行う.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Effect of Heat Transfer Surface Structure on Critical Heat Flux2013

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Asano, Kei Kawasaki, Nobuyuki Takenaka
    • 雑誌名

      Multiphase Science and Technology

      巻: 25 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] Liquid Hold-up Characteristics of Saturated Boiling flow in a Narrow Channel with Thermal Spray Coating2013

    • 著者名/発表者名
      Taisaku Gomyo, Junpei Yoshidome, Hitoshi Asano
    • 学会等名
      Eighth International Topical Team Workshop on Two-Phase Systems for Ground and Space Applications
    • 発表場所
      Bremen, Germany
    • 年月日
      20130917-20130919
  • [学会発表] 静電容量法による細管内一成分気液二相流のボイド率計測2013

    • 著者名/発表者名
      五明 泰作、浅野 等、河南 治、新本 康久、大田 治彦、藤井 清澄
    • 学会等名
      日本混相流学会混相流シンポジウム
    • 発表場所
      長野市
    • 年月日
      20130808-20130810
  • [学会発表] Effect of Heat Transfer Surface Structure on Critical Heat Flux2012

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Asano, Kei Kawasaki, Nobuyuki Takenaka
    • 学会等名
      Japanese-European Two-Phase Flow Group Meeting 2012
    • 発表場所
      熊本市
    • 年月日
      20120923-20120927

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公開日: 2014-07-24  

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