研究課題/領域番号 |
24560234
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
春木 直人 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (10311797)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 色素増感太陽電池 / 潜熱蓄熱材 / 光電変換効率 / 増感色素 |
研究概要 |
次世代の太陽電池である色素増感太陽電池は,光入射による発電時,増感色素の過度の凝集や増感色素の励起状態への遷移における温度特性により,一定条件以外では光電変換効率が低下することが普及の妨げとなっている.この色素増感太陽電池の光電変換効率の低下防止を目的とした本研究では,増感色素の光電変換効率の温度依存性の解消のための色素増感太陽電池に組み込まれる温度制御技術の開発を最終目的とし,平成24年度では,まず色素増感太陽電池の光電変換効率の温度特性を調べる測定装置の製作を行った.製作した測定装置では,JISC8912で規定されている光電変換効率の測定方法ができるように本研究費で購入したソーラーシミュレータを使用する.さらに,本研究費で購入した恒温水槽を使用して,高温環境下での太陽電池セルへの温度制御を想定した色素増感太陽電池セル自体とセルが設置された周囲環境の温度条件をそれぞれ個別に設定した条件下での測定が可能な測定装置とした. さらに平成24年度では,製作した光電変換効率の温度特性測定装置を用いて,色素増感太陽電池の光電変換効率の温度特性の測定も行った.その結果,色素増感太陽電池の光電変換効率を最も高く発揮する温度条件として,太陽電池のセル温度が最も重要であることを見出すとともに,具体的な温度条件も明確に特定した.さらに,どの期間,色素増感太陽電池の性能が維持される指標となる耐久性においても,温度特性が重要であることを明らかにした.この結果,色素増感太陽電池に対して温度制御を施すという本研究の基盤技術が,実際に色素増感太陽電池の光電変換効率の低下の防止に有効であることが実験的に確認されたことは,平成24年度における本研究実績の最も大きな意義である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代の太陽電池である色素増感太陽電池は,光入射による発電時,増感色素の過度の凝集や増感色素の励起 状態への遷移における温度特性により,一定条件以外では光電変換効率が低下することが普及の妨げとなっている.このため本研究の目的である「色素増感太陽電池の光電変換効率の低下防止」を行うため,従来の増感色素の光電変換効率低下の原因の一つである光触媒上での過度の凝集性が起こらない増感色素の探索と,増感色素の光電変換効率の温度依存性を確認し,色素増感太陽電池に組み込まれる温度制御技術を開発することを行う必要がある. この当初の研究計画において,平成24年度に行う予定であった新たな増感色素の探索については十分な成果を得られなかった.一方,従来の増感色素を用いた場合での光電変換効率の測定装置の作成と測定は順調に進展しており,ある程度の色素増感太陽電池の光電変換効率の温度特性の把握を行う事ができた.このため,現在までの達成度としては,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に十分な成果が得られなかった新たな増感色素の探索を引き続き行うとともに,完成した太陽電池の光電変換効率測定装置を用いて,潜熱蓄熱材を冷熱源とし,金属繊維材による色素増感太陽電池の温度制御技術の開発を行う予定である.想定する色素増感太陽電池の温度制御方法としては,金損繊維材が混入された潜熱蓄熱剤の使用を核とする.具体的には,金属繊維材含有潜熱蓄熱材を冷熱源として色素増感太陽電池に接触させることによって,潜熱蓄熱材によって色素増感太陽電池を伝導によって冷却することで,潜熱蓄熱材の相変化温度における色素増感太陽電池の冷却が可能になる. 特に,「使用条件と目標に満足する相変化温度と十分な潜熱量を有する潜熱蓄熱材の選定」,「目標を満足する冷却性能とするため,金属繊維材の種類や形状(繊維径・長さ・絡み),および潜熱蓄熱材への金属繊維材の充填量,充填方法(均一・偏在)等が冷却効果に与える影響の把握」,「放射による潜熱蓄熱材への蓄冷方法」等の項目の解明が本技術の開発に必要であるため,これらの項目を重点的に解明する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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