次世代の太陽電池である色素増感太陽電池は,光入射による発電時,増感色素の過度の凝集や増感色素の励起状態への遷移における温度特性により,一定条件以外では光電変換効率が低下することが普及の妨げとなっている.この色素増感太陽電池の光電変換効率の低下防止を目的とした本研究では,増感色素の光電変換効率の温度依存性の解消のための色素増感太陽電池に組み込まれる温度制御技術の開発を最終目的とした.平成24年度には,まず色素増感太陽電池の光電変換効率の温度特性を調べる測定装置の製作と測定を行い,色素増感太陽電池に対して温度制御によって,色素増感太陽電池の光電変換効率の低下の防止に有効であることを確認した. 平成25年度は,潜熱蓄熱材を用いた色素増感太陽電池の温度制御技術の開発として,金属繊維材を用いた潜熱蓄熱材の蓄放熱特性改善について検討を行い,金属繊維材混合による有効熱伝導率の向上と液相潜熱蓄熱材で発生する自然対流の抑制が,お互いに影響していることを確認した. 最終年度(平成26年度)は,まず潜熱蓄熱材を用いた色素増感太陽電池の温度制御実験を行い,その結果,色素増感太陽電池の光電変換効率の向上と性能が長期間維持されることを確認した.また,別途,金属繊維材を用いた潜熱蓄熱材の蓄放熱特性改善技術についての測定を継続し,金属繊維材の繊維径や混入割合等の各種パラメータが蓄放熱特性に与える影響について明らかにした.
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