研究課題/領域番号 |
24560236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
向笠 忍 愛媛大学, 理工学研究科, 講師 (20284391)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 液中プラズマ / 高圧力 / 発光スペクトル / 気泡 / 高速度カメラ |
研究概要 |
当該年度実施した研究は,現在保有する装置を用いて,高圧中での液中プラズマの挙動の観察とプラズマ診断である.供給電源としては現有する27.12MHz の高周波を用い,測定装置としては主として現有する高速度カメラを用いた.液体として純水を使用した.圧力範囲は最大9気圧までプラズマの発生が確認されたが,安定してデータを取得できた大気圧から5気圧までとした. プラズマの発光を,ダイクロイックミラーを用いて波長の異なる2つの像に分割し1台の高速度カメラを用いて同時に撮影を行った.これには2つの目的がある.一つはHαとHβの2つの発光を同時に撮影して高時間高空間分解能の励起温度分布を求めるもので,もう一つは,単波長の外部光源から映し出される気泡外形とHαなどの特定発光種を同時に撮影して,プラズマと気泡との連携性を調べることである. 研究実施計画をおおむね遂行した.しかし,予測と比べて励起温度が高くなった.原因を探るために分光器を用いて測定した結果,高圧下において大気圧以下の水中プラズマでは見られない気泡から連続スペクトルが発生しているためだとわかった.デジタルカメラによる撮影を行い画像を解析した結果,電極先端表面の一部からプラズマが細長く伸び,その先に気泡が発生していたが,電極面からの細長いプラズマの領域ではHα,Hβ発光特有の赤紫色をしている一方,その先の気泡内では大気圧では無色,2気圧では黄色,3気圧以上では青色と変化した.これらの色は分光器による測定結果とも一致することから,連続スペクトルは気泡内から発していると予想される.しかし,気泡内からどのくらいHαやHβの発光があるのかは現在の高速度カメラによる測定方法で確認するのは難しいため,今後の研究課題とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的として,液体中にマイクロ波または高周波を印加することにより液体中でプラズマを発生させる技術を用いて海洋中での化学プロセス,特に深海海底中に存在するメタンハイドレートの採取に関する新たなアプローチを確立することを挙げた.目標として50~100気圧下でのプラズマ発生としているが,現在は最大9気圧でのプラズマ発生を確認している.目標には至っていないがこの圧力においてもデータとしては十分価値あるものだと考えられる.また,この最大圧力は現有する圧力計のほぼ最大値であり圧力計を取り換えることにより今後さらに高い圧力に設定することが可能である. 高圧下での実験を行い,高速度カメラによるデータを取得することが可能となったが,想定していなかった連続スペクトルの発生など新たな課題も見つかった.しかし,このことは新たな研究テーマにもなり得る非常に興味深い知見でもある.
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今後の研究の推進方策 |
計画として挙げた中で現在遂行されていないものは以下である.1.高圧下における水中マイクロ波プラズマの発生と解析.昨年度にマイクロ波電源を購入したので装置のセットアップと,これまでの高周波プラズマの実験と同様の実験を行い比較を行う.2.高圧海水中でのプラズマ発生と解析.これまでは純水のみで実験を行ってきたがこれを海水に変えて実験を行う.海水ではナトリウムのDスペクトルが他のスペクトルを圧倒するので,そのような条件下でもこれまでと同じ実験ができるような工夫が必要である.高周波とマイクロ波の両方で行う.3.最大100気圧下でのプラズマ発生.圧力を上げる実験は,現有する装置の問題もあるが,安全には十分注意しながら圧力をあげて実験を行っていきたい.4.連続スペクトルの発生メカニズムの解明.連続スペクトルは気泡内から発生しているようである.そのためにこれまで行ってきた気泡挙動の数値解析をより高い圧力条件として行い.気泡内温度や生成種分布について調査する.また実験的にはどの位置からどれだけ発光しているかを,輝線スペクトルのそれとの違いについて明らかにしていきたい.連続スペクトルの発生メカニズムは超音波プロセスにおいても未解明な点でもあり,超音波による連続スペクトル発生に比べて容易に測定できる点においても意義があると考えられる.今後の推進する研究テーマの優先順位として高いものからら,1,4,2,3である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画として,主にマイクロ波電源に接続する測定系とチュナー系の部品類を購入する予定である.さらに,オーストラリアで開催される国際会議に参加する予定のための出張旅費にも使用する予定である.その他は主に実験で使用する消耗品類である.
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