研究課題/領域番号 |
24560236
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
向笠 忍 愛媛大学, 理工学研究科, 講師 (20284391)
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キーワード | 液中プラズマ / マイクロ波 / 高圧力 / 気泡 / 高速度カメラ |
研究概要 |
当該年度は2.45GHzのマイクロ波電源を用いて,高圧水中でのプラズマ発生実験を行った.前年度行った27.12MHzの高周波電源を用いた場合とはプラズマの様子に大きな違いがみられた.大気圧以下においてそれぞれの電源を用いて発生させたプラズマには外見上の違いはほとんどみられない.しかし,大気圧以上において,高周波の場合では電極の一部の領域から電極面に対してほぼ垂直に長さ約1mmの細長く伸びた放電がみられたが,マイクロ波の場合にはそのような放電はみられず,電極面全体を覆うように放電し,電極は激しく赤熱した.マイクロ波電源の最大電力である1.5kWを投入した場合においても,プラズマが発生したのは300kPaまでであった.このことから,より高い圧力下でプラズマを発生させるにはより周波数の低い電源を用いた方が有利であるという結果が得られた. 研究目的の一つである,プラズマの細長化現象はマイクロ波電源を用いた場合にはみられなかった.また,HαとHβの発光像の高速度カメラによる同時撮影から励起温度分布を求める方法は電極の赤熱による放射の影響を排除することができなかった.そのため本年度は高圧水中でのマイクロ波プラズマの物理特性を明らかにする方法として,プラズマを内包する気泡の成長と離脱の周期と離脱時の気泡径の関係について調査した.これらの関係は低圧時と高圧時ともにほぼ同じ傾向となった.マイクロ波の場合には高周波の場合に比べて同じ離脱気泡径に対して10~20ms秒ほど気泡離脱周期が長くなることがわかった.高周波の場合には特に高圧時にはプラズマの細長化現象がみられるが,ここでは電極面から上向き方向の流れが生じており気泡を上に押し上げる働きがあるものと考えられる.そのことが高周波場合において気泡離脱周期が短くなった原因であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,液体中にマイクロ波または高周波を印加することにより液体中でプラズマを発生させる技術を用いて海洋中での化学プロセス,特に深海海底中に存在するメタンハイドレートの採取に関する新たなアプローチを確立するである.昨年度は高周波電源を用いた実験により最大900kPaの高圧下における水中プラズマの発生に成功した.今年度はマイクロ波電源を用いた実験を行ったがプラズマを発生できたのは最大300kPaであった.このことから,高圧中でプラズマを発生させるにはより周波数の低い電源を用いた方が有利であるという知見が得られた.また,もう一つの目的であるプラズマの細長化現象はマイクロ波プラズマでは観察することはできなかった.大気圧以下では外見上の違いがほとんどみられない高周波水中プラズマとマイクロ波水中プラズマであるが,大気圧以上になるとプラズマ発生の様子が大きく異なることが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度はこれまでに引き続き実験的研究と,理論構築へ向けての数値解析を行う予定である.実験的研究としては電源を再び高周波電源に戻し,研究目的により近い状況で実験を行うため,電極の向きを上向きから下向きへと変え,さらなる高圧力下でプラズマを発生させるための電極形状の工夫や,場合によっては背圧弁を導入して電極からの気体導入によるプラズマジェットのような方法を行うことも考えている.また,これまで純水中でプラズマを発生させてきたが人工海水中でもプラズマを発生させる実験も行いたい.数値解析については,今年度から化学反応アプリケーションであるCHEMKINを導入したため,その有効利用を考えている.また,これまで行ってきた数値解析ではプラズマ反応を考慮することができず熱分解のみを扱ってきたため,新たに振動電場中の電子の挙動を考慮した計算を組み込むことを考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の支出額で十分な研究成果が得られたため.また,来年度に当初の研究計画にはなかった実験を行う予定となり,追加の支出が見込まれるため. これまでのプラズマ発生可能圧力の限界をより高める方法として,プラズマへの気体導入を試みる.この方法には気体や,気体導入機構を加えた電極部の改造,さらには背圧弁等の装置の追加が必要になる.
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