当該年度は,昨年度行ったマイクロ波電源に替えて,一昨年度使用した27.12 MHzの高周波電源に戻し,これまで使用してきた反応容器を上下逆さまに配置し,電極向きを下向きとした実験を行った.さらに,プラズマが発生する印加電極と対向電極の間隔を狭めて,電極間にアルゴンガスを導入したプラズマジェット方式の実験を行った. 下向き電極の場合,プラズマが安定できたのは従来と変わらず印加電力600 Wにおいて500 kPa程度であった.しかし,上向き電極の場合はプラズマが消滅すると再び発生しなかったが,下向き電極の場合はプラズマが断続的に発生した. プラズマ発光スペクトルから,大気圧下ではいくつかの輝線スペクトルのみが現れたのに対して,200 kPa以上ではさらに380 nmから長波長側に連続スペクトルが現れた.連続スペクトルは励起した水分子によるものである.連続スペクトルの空間分布とHαのそれとを比較するため,2000 fpsの高速度カメラを用いて500~600 nmでの発光像とHα発光像の同時撮影を行った.Hα発光像は電極面から細長く伸びており,根元付近で発光がやや強く,先端付近で左右に揺れるような軌道を描く.一方,連続スペクトルの発光像はHαと同じ位置で発光が強いものの,先端付近で発光が強く,分布はより広がっている.さらに,プラズマの消滅時において,Hαの発光は1フレームでほぼ完全に消滅しているのに対して,連続スペクトルの発光は数フレームにわたり残存した. プラズマジェット電極を用いた場合,1 MPaで安定してプラズマを発生させることができた.このときの印加電力は200 Wを超えることがなかった.このことから,高圧下においてプラズマを発生させるにはプラズマジェット方式が最も適切である.ただし,実用化において本手法は海上から高圧ガスを供給し続けるためコストの増大が懸念される.
|