本研究は、MEMS技術にてマイクロメートルオーダーの微細な円孔を加工し、この一点のみから発生する制御された沸騰気泡システムを作り上げ、その制御下の単一沸騰気泡による限界熱流束を実験的に検討するものである。 平成26年度は、電子回路用銅薄膜製プリント基板および電子回路用シリコン(Si)ウエハーと透明石英ガラスの各表面に金属スパッタ加工を施した金属箔を加熱面として実験的検討を行った。具体的には、プリント基板上にウェットエッチングにより、数十μmの円孔キャビティを作り、これを沸騰核として、核沸騰および限界熱流束の実験を行った。また、Siウエハーと石英ガラスの表面上に金属箔を加熱面として、ナノメートルオーダーの沸騰核をもつ加熱面で核沸騰および限界熱流束の実験を行った。つまり、人工的に制御されたキャビティのみから発生する制御された沸騰気泡システムを用いて、沸騰熱伝達および限界熱流束の機構の解明を試みた。なお、加熱面の加熱は昨年度同様、銅薄膜への直接通電加熱により行った。また、温度計測には、昨年度同様、銅薄膜の電気抵抗の温度依存性を利用するとともに、赤外線放射温度計を使用して、加熱面裏面からの2次元温度場変動を高速度(200Hz)でも計測した。 その結果、(1) 伝熱面上の二次元温度場より気泡生成箇所では最も早く温度が上昇、その後最も高い温度に到達し、気泡離脱後は周囲から液の補充がなされるため急激に冷却される、などを解明した。特に、(2) 低圧下の沸騰では、蒸気泡の合体を伴い単気泡で限界熱流束に至る基本的な系での限界熱流束条件の実現に成功し、大気泡直下に随伴する小気泡の影響が大きいことを確認し、温度計測も行った。また、(3) 熱伝達率が低下する低圧下の沸騰伝熱に対して、伝熱面上にそれよりも小さい寸法の平滑面を塗布することで、離脱気泡径の減少を導き、熱伝達の促進を確認し、最適サイズも導いた。
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