研究課題/領域番号 |
24560247
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研究機関 | 大阪府立大学工業高等専門学校 |
研究代表者 |
杉浦 公彦 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00249814)
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キーワード | 燃料電池 / 特性診断 / 過渡応答 / PEFC / エネルギー利用 |
研究概要 |
4分割セパレータを用いて同一電極面内劣化分布を解明すべく本診断法を適用したが,セル全体の性能診断を行うために診断精度が落ちていたことが平成24年度終期に明らかとなった.そこで平成25年度からは,PEFCの劣化要因のほとんどを占めるカソード分極と膜分極に特化することで診断等価回路を少なくして診断精度の向上を図った結果,カソード側および膜に関する分極の診断精度は飛躍的に向上した.これを用いて同一電極面内劣化分布について検討した結果,部分的に触媒量を変えたMEAを用いても触媒量の多い部分は運転初期は活性化分極が低いが,その後生成水によるフラディングやプラギングによって活性化分極や拡散分極が大きくなるなどの診断も行うことができた.さらに,運転初期では電池中央部の活性分極は低いが,経時変化とともに抵抗分極が増加してきた.この理由としてステンレス製分割電極を用いていることから,スルホン酸溶液による金属腐食が生じていることが分かり,本診断法でこの劣化要因を診断することはできたが,様々な診断尺度を見出すには短期間での腐食を防止する必要があるとし,分割セパレータへの様々な金メッキ処理を検討し,抵抗分極や生成水の排水性能などを満足させるメッキ法を見出した.しかし,4つの分割電極の面出しの精度の差から接触抵抗への影響があるため,今後これらの問題点を解決することで,同一電極面内劣化分布を診断できる診断尺度を構築する. 平成25年度の主テーマであるスタック診断法の確立では,CHEMIX製の4cm2x4セルショートスタックへこれまで4分割電極で使用していた診断法を適用した.スタック内に性能がやや悪いMEAを1セル積層して診断した結果,どの積層位置に入れても悪いセルを診断することができ,本診断法のスタックへの適用が可能であることを立証できた.今後は,スタック積層位置の劣化要因を診断する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度で積み残しとなっていた同一電極面内の劣化要因分布の解明では,診断法の改善と4分割セパレータの改良によって診断精度を向上させることができ,概ね同一電極面内での劣化要因の違いを診断できることを確認できた.しかし,4つの分割電極の面出しの精度の差から接触抵抗への影響があるため,今後これらの問題点を解決することで,同一電極面内劣化分布を診断できる診断尺度を構築する. 平成25年度の研究目標である(1)4cm2x4セルショートスタックの設計製作については費用対効果の観点とこれまで使用してきた特性診断器を小さな変更で使用できることからからCHEMIX製の4cm2x4セルショートスタックを購入し,診断に耐えうることを確認した.(2)スタック診断法の確立については,1セルずつ連続診断する方法ではスタックにおけるスタックでの各セルの発電状況を診断できないことから,4セル同時診断する方法がよいことを見出した.(3)スタック環境設定装置の設計・製作については市販品のスタックを使用しているため行っていないが,スタックの運転方法により各セルに性能の差をつけて診断できることを確認した.さらに,平成26年度の上半期で行う(1)スタックセル位置と劣化要因との相関の解明についても,1セルだけ性能の悪いMEAを積層位置を変えながら診断することで,積層位置と劣化要因との相関を見出すことを示唆でき,今後,平成26年度の計画通りに様々なスタック環境や各セルの状況を変更することでスタックに特化した劣化要因分布の解明を行っていく予定である..
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今後の研究の推進方策 |
3年間の研究計画においてそれぞれの問題解決のために前後しながら研究を進めているが,概ねその成果は出始めている.また,平成24年度の終期から平成25年度の前期で電池評価装置を作成し,4セルスタック用診断装置も作成したことから,本年度は4分割セパレータにと4分割用診断器による同一電極面内劣化要因分布の解明と4セルショートスタックによるスタック診断器によるスタック内セル位置と劣化要因との相関の解明は同時進行できるようになっているため,それぞれ研究計画に従って検討することで研究を推進できる環境が整っている.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では25cm2PEFCショートスタックを特注で試作する予定であったが,予算額を大幅に上回ることとから市販のショートスタックを購入することで予算額よりも安価に購入できた.また,計画よりも小さなスタックのためにこれまで使用していた流量計を使用できることになったことから,これらの予算を小型スタック特性診断器を新たに試作することで,スタック診断と4分割セパレータを使用した同一電極面内劣化要因分布解明を同時で行えるようにした.さらに,高周波数切り替え装置を試作予定であったが,これよりも交流インピーダンスの連続計測が可能なFCスキャナーを購入することで,スタック診断法の妥当性を検証できるようにした. 以上のように,研究成果に伴って現状最も良い選択をしながら備品購入を進めた結果,上記の繰越額が発生した. ショートスタックでは常に4枚のMEAを使用することと,4分割セパレータを用いた25cm2単セルを用いた実験も同時に行うことから,当初計画よりもMEAが必要となるため,繰越金はMEA購入へ充てる予定である.さらに,スタック内の各セルのMEA状態を変更するために,MEAを自作する予定であり,そのためのナフィオン膜,白金電極触媒やガス拡散層などの材料購入費を捻出する必要がある.当初計画していた冷却水循環装置は,学内予算で確保したため,この予算を上述し自作MEA用材料費および市販MEAの追加分に充てることで,研究結果の再現性を十分に確認しながら研究を進めていく予定である.
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