本研究で開発した特性診断器を入口から出口に向かって4分割したセパレータで構成されたPEFCへ適用することで,同一電極面内の劣化要因分布の有無を確認した.その結果,カソード側抵抗分極はガス入口から出口へ向かうにつれて小さくなっていることから,電池反応で生成された水が膜を湿潤することでこのような分布ができるだろうという一般的な認識を数値をもって確認することができた.また,カソード側活性化分極は電池中央部が最も低く,入口および出口付近がやや高くなっており,電池温度がやや高くなる中央部での触媒活性が盛んになることも確認できた.さらに,カソード側拡散分極は,ガス入口から電池中央部付近はほとんど変わらないが,電池中央部からガス出口に向かって大きくなっており,電池反応で生成された水が電池出口付近でフラディングやプラギングを生じやすいことを示しており,当研究室で画像計測した結果と一致していることを確認できた.さらに,ガス利用率を大きくすることでの電池出口付近の燃料不足状態や,逆に大きくすることでの電池温度の低下などの実験も行った結果,それぞれの条件に伴って拡散分極や活性化分極などが変化したこことから,本診断器を使っての劣化防止を図ったセパレータやMEA開発が可能であることを示せた. また,本診断器を燃料電池商品のメンテナンス機器としての応用の可能性を検討するため,性能が悪いMEAを4セルショートスタックへ紛れ込ませて,そのセルを本診断器で探索した.その結果,スタック全体で診断して性能劣化セルの有無を判断することができたと共に,その中から性能劣化セルを見出し,その劣化要因も診断することができた.
|