研究課題/領域番号 |
24560248
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
永橋 優純 高知工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80208040)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオマスエネルギー / 流動層 / 熱分解 / バイオオイル |
研究概要 |
本研究では反応時間を縮めることによりオイル品質を高め,かつ一定量以上のバイオオイルを得ることを目的として流動層型熱分解炉を製作しバイオオイルの生成を試みた.結果として,気相自由落下方式よりも高い発熱量のオイルが製造でき,かつ処理能力も高い熱分解炉が得られた.以下にその概要を示す. (1)流動層の基本特性であるΔp-U 線図を,加熱をしないコールドモデルおよび熱分解時と同じ温度のホットモデルにおいて得られたデータを元に作成した.流動化開始速度は冷時,加熱時とも従来の他の研究者により報告されている値(実験式の値)にほぼ一致し,かつ流動化後は安定した層内圧損を示すことから良好な流動化状態が得られているものと判断した. (2)上記熱分解炉を用いてバイオオイルの生成を試みた.先ず始めに,本装置における粉末状バイオマス材(0.43~1.7mmのヒノキ乾燥粉末)の供給速度の限界を確認した.間欠的に供給するバッチ式での供給量が多すぎると供給ラインで目詰まりを起こすのでそれ以下での供給で良好な熱分解を得た.結果的には,バイオマス材投入後供給量の9割を数秒以内で熱分解できるまでに装置改善がなされた(従来の気相方式と比較して). (3)生成したバイオオイルに対して,目視観察と発熱量測定で第一段階としての粗い品質評価を行った.熱分解の所要時間は,熱分解能力の高い流動層では,流動化状態に係わらず,単に熱分解ガスが冷却部に至るまでの高温領域に存在する時間(滞留時間)に相当すると考えて良い.この時間が短いほど高品質のバイオオイルとなるが,現時点では加熱媒体ガスであるN2ガスの流速が最も早いとき(流量35L/min)に滞留時間は2.1秒となり,低発熱量として26.9MJ/kgを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の1年目は,より高い発熱量のバイオオイルを品質評価が可能な程度(1回もしくは2,3回の実験で7-8cc程度)の量生成可能な流動層式熱分解炉を製作することにあった.その点では,質,量ともに目標値を達成する結果が得られた.特に,発熱量に関しては実施者らにより従来値(約11MJ/kg)の2倍強の品質のバイオオイルを精製することが出来た. ただし,現時点では単発的,または数回の間欠的な熱分解操作にとどまっている.実際的な稼働を視野に入れた場合は,連続的であることが望ましいが,そうではなくても最低条件として,準連続処理(バッチ処理の継続繰り返し)運転ができる装置構造,機構とする必要がある.今後はこのような装置考案・改善が必要となる.
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今後の研究の推進方策 |
(1)研究遂行に関して,一部変更があり研究費の使用に当初予定と異なる部分が出た.一つは,発生ガスが冷却部に至までの所要時間(滞留時間)を測るために一般的な自動車の排ガス測定器を充てる予定であったが,現在市販の装置ではどれを使っても要求仕様を満たさないことが判明した.要するに500℃環境下でガス分析のできる装置は予定価格帯では存在しない.このことからガス分析器による測定はやめ,ガス発生により増大したガスの冷却部直前への到達をその部分でのオリフィス構造による圧力測定で確定するように測定方法を変更した.このことにより当初計上のガス分析器(約50万円)の支出が数万円以下のオリフィス製作費に変更となった.実験の進捗に大きな影響は与えていない.一方,ガスクロマトグラフによるガス分析に関しては,まだ実施できていなく予定より半年遅れの状態にある.そのためガスクロカラムの購入も遅れているが,次年度夏にはガス分析を実施予定でいる. (2)上記のガス分析と並行して,研究2年目は流動層コールドモデルによるチャーの分離機構の研究を行う.熱分解炉の連続運転を実現するに必須の項目であり,当初の予定通り傾斜分散板と領域分けしたスリット付き2成分系流動層での粒子分離実験を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)初年度のガス分析が2年目にずれ込むため,この分の支出(ガスクロカラム代と,分析精度検証の目的での外部分析依頼費)が当初予定の支出以外に加わるが,その他は計画通りに使用の予定である. (2)流動層コールドモデル製作のため材料購入や装置外注費を当初計画通り支出の予定.
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