研究課題/領域番号 |
24560248
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
永橋 優純 高知工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80208040)
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キーワード | バイオオイル / 流動層 / 急速熱分解 / 滞留時間 / 流動層熱分解炉 / 発熱量 / 国際情報交換(カナダ) |
研究概要 |
平成25年度は、加熱・熱分解を行うバイオマス材の熱分解実験の継続と、加熱を伴わないコールドモデル実験の準備を行った。加熱実験では、昨年度の熱分解炉に滞留時間の変更を加えるため、フリーボード部のサイズを変えた2通りの実験を行った。すなわち、フリーボード部を大幅に縮小し(約60%)滞留時間の短縮を測った実験と、フリーボード部容積の縮小をその中間に抑えた装置での2通りの実験である。それぞれにおいて、加熱媒体ガス(N2ガス)流量やバイオマス材投入場所の影響を調査した。結果としては、前年度の滞留時間15~5secに対し、7.8~1.8secにまで反応時間(滞留時間)を短縮することができ、得られたバイオオイルの発熱量(低発熱量)も前年度の最大11MJ/kgから14.1MJ/kgにまで高めることができた。 また、飛散性の高いバイオマス材の炉内投入場所の影響も調査した。流動層炉の特徴の一つとして、飛散しやすい粉末バイオマス材を層内深くに投入するほど熱分解量が増え、逆に層表面近くで投入した場合、バイオマス材の多くは層内に長く留まらず下流部へ流出し熱分解量が減少することなどが明らかとなった。さらに、加熱ガス流速が低いと流動化が不十分となりスムーズなバイオマス材供給ができず運転に支障を来す、流速の下限値としてほぼ2倍のUmf(流動化開始速度)までということが分かった。以上、流動層炉の特性故の、最適流量範囲や最適投入高さが存在することが明らかとなった。 コールドモデル実験に関しては、スリットを付設した2室連結式流動層装置の製作が完了したところである。 なお、当初予定のガスメーター購入は、装置性能の不十分さから購入を止め、他の方式で代替した。また、ガス分析によるオイルの品質評価は、発熱量による品質評価の方法に代替した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、H25年度にはコールドモデルによるチャーの分離実験に入る予定であったが、H24年度の加熱・熱分解実験の立ち上げが遅れ(主な原因:高温下における熱分解炉全体のシールを完璧にできず、ガス漏れ対策で手間取ったため)、加熱・熱分解実験が研究の主体となってしまったため、研究の進捗状況は「やや遅れている」状況。ただし、現時点(H26年5月)では熱分解実験については所期の目的をほぼ達成し、コールドモデルの研究に入っているため、本年度中に当初予定の研究項目の完了の目処は立っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定としては、実用化のための連続運転を目指した検討となる。すなわち、 1.熱分解炉におけるバイオマス材供給時の熱分解の可視化実験(加熱実験の残り) 2.チャーの分離実験として、コールドモデル機による2成分流動層における粒子分離実験 3.バイオマス材の供給およびチャーの分離を連続的に可能とする装置構造・機構の検討 以上の検討により、実用に近い流動層型急速熱分解炉の設計指針を提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ガスメーター購入予定であったものが、所定の性能のガスメータが市販品にないことから取り止めて、市販のガスセンサーモジュール(数万円程度)を改造・自作したガスメーターで代替した事による。測定目的に適う性能(2秒以下の応答速度で500℃のガスの直接測定が可能なこと)のガスメーターは当初予定の予算内(50万円程度)では国内外に見当たらない。もう一点の変更として、ガス分析によるバイオオイルの品質評価を、発熱量測定によるオイルの品質評価法に変えたため、分析費や分析装置の部品(ガスクロカラム)代が不要となったことにもよる。さらに、この年の国際会議出席の予定が、研究の進み具合が予定よりもやや遅れたため次年度に先送りしたこと、などにより当該年度の支出計画からは差違が生じた。 変更分となった研究費は、加熱用やコールドモデル用の装置製作費(外注費)や、連続運転を目指した装置改造費、新規バイオマス材投入器など、装置の製作費に充当する。また、繰り越した海外旅費はH26年6月のバンクーバーで開催される国際ワークショップでの出席・発表で使用予定である。
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