本研究は非平衡プラズマによる高温高圧場にある予混合気の着火特性について明らかにすることを目的としている。本年度は最終年度であるので特に非平衡プラズマを予混合気に照射することによって生じる化学種の分析を行うとともに、化学動力学シミュレーションとの比較を行った。 プラズマ照射によって予混合気中に生じた未知の化学種の分析方法として、検知管を用いた方法に加え、有効な分析方法の一つである質量分析を適用した。一般的な質量分析では通常ひろく用いられている電子線によるイオン化法では対象分子がフラグメント化してしまうため、比較的大きい分子量の化学種が生じているのかどうかが分からない問題があった。そこで、今回イオン付着質量分析法を適用した。この方法ではリチウムイオンを未知の分子に静電気力によって付着させてイオン化を実現するため、フラグメント化する懸念がほぼ無いという優れた特徴を有している。この方法を用いて、プラズマ照射、非照射の予混合気の分析を行ったところ、特にメタン予混合気において、ホルムアルデヒドが検出される一方、分子量の大きな化学種は検出されなかった。液体クロマトグラフィーによるホルムアルデヒド単体での校正実験も併せて実施した。これらの実験結果に基づき、化学動力学計算によって温度に対する着火遅れ時間のホルムアルデヒドによる影響をシミュレーションしたところ、温度依存性が良く再現された。オゾンや窒素酸化物による影響も想定されたが、着火遅れの温度依存性シミュレーションからは実験結果と異なった依存性を示したため、今回の促進は非平衡プラズマによって生じたホルムアルデヒドがその促進の主要な原因であると考えられる。
|