建物上部および地表面(ピット)に設置された地震感知器の加速度データをもとに、かごが走行する場合のエレベータ・ロープ(コンペンロープ)の揺れをリアルタイムに推定する簡易的な方法について検討した。その結果以下の成果が得られた。 (26年度の成果) ①25年度の実験で一部実験結果と数値解析結果とが一致しなかったことの原因究明のため、ロープの減衰特性について調査した。その結果、減衰係数一定ではなく減衰比一定に近いことを確認した。②ロープ上端を地震波加振した場合の応答特性(ロープ長さとロープ最大変位との関係)についての実験結果と数値解析結果(簡易計算法および差分法による数値解析結果)とを比較し、良く一致していることを確認した。 (全体としての成果) ①ロープの張力分布を考慮した振動モードを理論的に求めた。また、各振動モードについての刺激係数を差分法による数値解析により求めた。これらを利用し、地震時の建物上部および地表面(ピット)に設置された地震感知器の加速度データをもとに、リアルタイムにロープ揺れを計算する簡易的な方法を開発した。②この簡易計算法と従来の差分法による計算法との誤差について、種々の地震波(28波)、建物(7ケース)の条件で検討した結果、誤差+20%、-30%以内となることを確認した。また、簡易計算法で用いる振動次数と解析精度との関係についても検討し、張力の低いコンペンロープでも、3次まで考慮すれば実用上十分であることを確認した。③地震波加振時の応答について、モデル実験、簡易計算法および差分法による数値解析の結果を比較し、概ね一致することを確認した。 以上のことから、提案したエレベータ・ロープ揺れのリアルタイム解析手法の妥当性と有効性を確認できた。
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