本研究課題では,外部磁場に応じて粘弾性が変化する磁気粘弾性エラストマを機械構造物の制振装置へ応用する試みの一つとして動吸振器に着目し,従来の受動型動吸振器と同様の信頼性を確保しつつ,外乱の多様性,制御対象構造物の動特性変化等に柔軟に対応して,受動型装置よりもさらに振動を低減することが可能な同調型動吸振器の開発を行った. まずは,主系構造物及び剛性可変型動吸振器の数値計算モデルを構築し,既存の受動型動吸振器の設計理論をベースにモデルの妥当性検証を行った.制振効果を得るための対象外乱振動数への同調アルゴリズムについて検討し,外乱作用時の振動系の応答を数値的に予測した.提案する動吸振器の同調可能範囲において,在来型を上回る制振効果が確認できたことを踏まえ,剛性可変型動吸振器及び制振対象構造物模型を設計・製作した. 続いて,製作した動吸振器の基本特性として,印加磁場に対する振動数可変範囲及び減衰比の変化について評価した.装置結合部の摩擦や磁束漏洩等が影響し,理論上予測される固有振動数の変化率には達しなかったが,振動数の可変性を確認できた.一方,減衰比については磁場への依存性は小さいことがわかった. さらに,提案する動吸振器を主系構造物と結合し,上記の検討で見いだされた固有振動数の可変範囲内において,定常外乱作用時の同調型動吸振器による制振性能を評価した結果,数値計算とほぼ同等の制振効果が確認され,提案装置の有効性が示された.最後に,外乱振動数を自動検出し,動吸振器の固有振動数をリアルタイムに同調させる制御手段を実装して,加振周波数が時間とともに変化する非定常外乱に対して制振性能を評価した結果,最も制振効果の高い状態を維持しながら有効に主振動系の応答を抑制できることを確認できた. 以上の結果をもって,所期の目標を達成できたと考えている.
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