研究課題/領域番号 |
24560257
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
鞍谷 文保 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00294265)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 振動工学 / モード解析 / 有限要素法 / 減衰 / モード形状 / 接触解析 / エネルギー散逸 / すべり摩擦 |
研究概要 |
平成24年度は,スポット溶接構造やボルト締結構造などの平板が部分的に接触する構造を取り上げ,その構造に特有な減衰の発生メカニズムを実験と有限要素解析で解明することを目的とした.特に,曲げ基本モードだけでなく,より高次の曲げモードに関してもそのモード形状と減衰発生の関係を明らかにした.具体的な検討対象として,1枚の長板を2枚の短板で上下から挟むように締結した3枚構造の試験片を用いた.最初に実験でモードごとの減衰特性(モード減衰比)を評価した.次に,線形振動解析で得られた振動モード形状を基にモードごとの減衰特性の違いを考察した.さらに,静的接触解析を用いた摩擦による散逸エネルギー推定法を提案し,推定法で得られた散逸エネルギーを基にモードごとの減衰特性の違いを考察した.得られた結果は次のとおりである.実験結果と振動モード形状から,試験片の長手方向中央の垂直面に対して対称なモードと逆対称なモードで減衰特性が大きく異なり,対称モードの減衰が大きくなることが明らかになった.散逸エネルギーおよび振動モード形状からその理由を検討した結果,対称モードは逆対称モードに比べて接触部での摩擦による散逸エネルギーが大きく,さらに構造全体の運動エネルギーが逆対称モードに比べて小さいためであると推察された. スポット溶接などの平板構造の減衰発生メカニズムを明らかにすることは,構造の減衰を制振材などの付加なしに増加させる設計に役立つ.従来の研究では,曲げ基本モードに対しては摩擦による散逸エネルギーの推定法が提案されていたが,より高次のモードまでの散逸エネルギーを推定する方法は提案されていなかった.提案した散逸エネルギー推定法を用いることで,より高次のモードの減衰特性の定性的な推定が可能になる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,スポット溶接構造やボルト締結構造などの平板が部分的に接触する構造に特有な減衰の発生メカニズムを実験と有限要素解析で解明することを目的とした.実験で得られたモード減衰比と線形振動解析で得られた振動モード形状さらに静的接触解析を用いた摩擦による散逸エネルギーを基に,曲げ基本モードだけでなく,より高次の曲げモードに関してもそのモード形状と減衰特性の関係を明らかにした.その結果,試験片の長手方向中央の垂直面に対して対称なモードと逆対称なモードで減衰特性が異なる理由が明らかになり,モードごとの減衰特性の推定が可能になった.したがって,おおむね順調に進展していると評価できる.ただし,静的接触解析を用いた摩擦による散逸エネルギー推定法においては,曲げ振動による慣性力が考慮できない問題点がある.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,慣性力を考慮した静的接触解析法および,慣性力が考慮される動的接触解析法を検討し,摩擦による散逸エネルギーをより精度よく推定する法を提案する.さらに,設計に利用可能な周波数応答解析が可能な接触部の減衰モデルを提案する.また,接触解析で得られた接触位置,接触面積などを基に適切な減衰モデルの配置・寸法を検討し,最終的には固有値解析で得られたモード形状を基に減衰モデルの適切な配置決定法を提案する.なお,平成24年度の実験による検討では,インパルスハンマー法を用いた試験法を採用した.平成25年度では,減衰特性のより精度の高い実験的評価が可能な加振機を用いた振動実験を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の振動実験においては,インパルスハンマー法を用いた試験法を採用した.その結果,加振機を用いるための振動実験用治具の製作を行わなかった.平成25年度では,減衰特性のより精度の高い評価を行うために,加振機を用いた振動実験を行う.さらに,センサーとして小型軽量センサーを用いる.平成24年度未使用分は,加振機を用いた振動実験用治具の製作費用と小型軽量センサーの購入に使用する.
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