最終年度の平成26年度は,平成24・25年度に引き続き,スポット溶接構造やボルト締結構造などの平板が部分的に重なる構造を取り上げ,その構造に特有な減衰特性の予測法を検討した.平成24・25年度の検討で,接合構造の減衰の主要因は接合接触面でのすべり摩擦によるエネルギー散逸であり,接触解析を実施することですべり摩擦による減衰特性の評価が可能であることを示した.一方,接触解析は非線形時刻歴応答解析であり,計算負荷が高い.そこで平成26年度では,解析負荷が小さい周波数領域での特性評価が可能な接合部のモデル化について検討し,固有振動数だけでなく,減衰特性も適切に表現可能なモデル化とそのパラメータの設定指針を示した. 得られた結果は次のとおりである.接合部のモデルとして,平板をシェル要素で接合部をビーム要素でモデル化する簡易モデルでも,ビーム要素とシェル要素の結合において,ビーム要素節点と適切な領域のシェル要素節点(等価結合座面上の節点)を多点拘束することで,曲げ剛性および面内ねじり剛性が的確に表現可能となるために固有振動数を精度よく再現できる.さらに,すべり摩擦による減衰を表すモデルとして,部分的に重なる上下のシェル要素の節点間を面内方向ではなく面外方向の相対速度に対するダッシュポット要素で結合することで,モード形状に依存した減衰を表現可能であり,周波数に反比例する減衰係数を設定することでモード減衰比を精度よく再現できることが明らかになった. 周波数領域で振動特性の評価が可能な接合部の有限要素減衰モデルを提案し,その妥当性を示したことは,設計段階での減衰評価を容易にすることにつながる.これは,設計の効率化に寄与する.
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