研究課題/領域番号 |
24560258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
毛利 宏 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (50585552)
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研究分担者 |
孕石 泰丈 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10402489)
菅沢 深 玉川大学, 工学部, 教授 (80297100)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 交通機械制御 / 車両運動性能 / Vehicle Dynamics / 人間-機械系 |
研究概要 |
横滑り角は車の「動き方の質」を表わす状態量と見ることができる.運転するときにドライバが頼りにする視覚情報に影響する.ドライバが横滑り角情報をどのように使い,運転しやすさがどのように変わるかを調べた.実験及び解析では,横すべり速度が常時ゼロになる点をZSPとして定義し,その前後位置と車線変更時の操舵挙動の関係に着目した.ヨーレイトまたは横加速度を一定にしてZSPを三通りに変更する条件を選んだ.解析ではドライバを二つの制御動作モデルで表現した.一つは前方注視モデルであり,もう一つは一次予測モデルである.前者はヨー角と横変位がドライバ操舵に影響するのに対して,後者ではそれらに加えて車体横滑り角も影響する.ヨーレイトが一定の場合には注視モデルではZSPの影響がほとんど表われない.また横加速度一定の場合には予測モデルはZSPの影響を全く受けない. 上記を踏まえて,実験をした.実験ではドライバモデルのパラメータ同定も行った. 1.ヨーレイト一定の場合にも,横加速度一定の場合にもZSPが操舵に影響した. 2.ZSPが重心点よりも前にあると運転しづらくなる.このときは予測モデルに近い運転をしており,横滑り角の情報を使って自ら収束性を悪化させている. 3.ヨーレイト一定でZSPを後方にするとドライバ時定数が大きくなった.これはドライバの余裕が増えたことを意味し,官能評価とも一致する. 4.横加速度一定では注視モデルに近くなり,進路角よりもヨー角を重視していた.車両の特性によって運転に必要な情報を選択していると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では以下の①~③の手順で進め,平成24年度は①と②の一部を終了予定としていたが,③の本実験にまで着手することができた. ①実験準備:既存装置の改良,走行条件,仕様決定などの,全体が円滑に進むための基盤作り ②予備実験:少数の被験者でデータ処理,解析方法等を決めて本実験に移行できる目処を得る. ③本実験 :多数の被験者実験に基づき統計的に結論を導く.現場で活用できる妥当性も検証. また,当初計画以外に車体横滑り角の推定方法や,ドライバモデルパラメータの同定方法についても目処を得た.得られた結論はまとめて,口頭発表を2件行い(「拡張カルマンフィルタを用いた車体スリップ角の推定」永井惇也,孕石泰丈,塩澤裕樹,毛利宏,日本機械学会第21回交通・物流部門大会TRANSLOG2012)(「車体スリップ角の特性がドライバの操舵に及ぼす影響について」鈴木雄太,保坂雅裕,孕石泰丈,毛利宏,自動車技術会関東支部2012年度学術研究講演会),また査読付論文として2件を投稿中である.(「非線形カルマンフィルタを用いた車体スリップ角の推定」永井惇也,孕石泰丈,塩澤裕樹,毛利宏,日本機械学会論文集C編)(「複数の前方注視点を用いた操舵モデルの検討」古性裕之,風間恵介,孕石泰丈,毛利宏,日本機械学会論文集C編).また,車体横滑り角の推定方法に関しては特許出願(特許出願番号:特願2012-264363,出願日:2012/12/03,発明の名称:車体横滑り角推定装置,発明者:塩澤裕樹,鈴木達也,毛利宏,孕石泰丈)した.また本研究助成にて実施した結果を発表した上記,自動車技術会関東支部2012年度学術研究講演会ではベストペーパー賞を受賞したことも付記する.
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今後の研究の推進方策 |
ZSPの位置を前後方向に固定した場合の結論は,かなり具体的に得られた.ただし,まだ重心点から後車軸の間での適正距離などについて調べる余地がある.一方,一般の車両ではZSPは固定ではなく,操舵に応じて前後に移動する.その動特性が如何にあるべきかを調べるために,ヨーレイトに対する車体横滑り角の動特性を一次/一次の伝達関数で表現して,それぞれのパラメータの適正値を調べる.適正値の決め方はドライバモデルパラメータ同定方法,制御成績算定法を用いる.これらの技術はほぼ確立されている.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の菅沢教授(玉川大学・東京都町田市)に配分した760千円のうち、山梨大学までの研究打合せのための旅費として計上した費用の一部の30千円が残った。これは研究の進捗状況により打合せをメール・電話等で行い予想よりも少ない出張となったためである。そこでその30千円は次年度の研究打合せのための出張旅費として繰り越して頂くこととした。これを併せた次年度の研究費の使用計画は以下のようにした。 出張費(研究打ち合わせ,学会発表など):230千円、被験者への謝礼:200千円、学会発表(自動車技術会・機械学会)参加登録費:100千円、論文投稿,掲載費:100千円の 合計630千円を計画している.
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