研究課題/領域番号 |
24560258
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
毛利 宏 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (50585552)
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研究分担者 |
孕石 泰丈 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (10402489)
菅沢 深 玉川大学, 工学部, 教授 (80297100)
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キーワード | 交通機械制御 / 車両運動性能 / Vehicle Dynamics / 人間-機械系 |
研究概要 |
車体横すべり角を小さい車が運転しやすいことは経験的に知られていたが,その理由はこれまでまったく明らかにされていなかった.今年度の研究で,その理由が実験的にほぼ明らかになった.これは世界で初めての知見である. 横すべり速度が常時ゼロの点をZSPとして定義し,シミュレータ上でその前後位置を変更して車線変更を行った.その結果,ドライバは車両の向き(ヨー角)で将来の位置を予測していることがわかった.実際の将来の位置は進行方向(速度ベクトルの方向:進路角)を元にして予測しなければならないが,ドライバは進路角を正確に認識できていない. ZSPを重心より後方に配置した場合には,操舵角を早く戻してしまい,目標ラインの手前で収束してしまう.一方,ZSPを重心よりも前方に配置した場合には,操舵角を戻すタイミングが遅れて目標ラインを越えてオーバーシュートした走行軌跡となる. 上記現象を確認するために,ヨー角を基準にした前方注視二次予測位置をガイドラインとして前方に描いた場合と,進路角に基づいたガイドラインを描画した場合を比較した.その結果,ヨー角に基づいたガイドラインの場合には,ガイドラインを表示しない時と殆んど変わらないのに対し,進路角に基づいて描いたガイドライン表示の場合には,ZSPの位置によらずオーバーシュートのない理想的な車線変更が可能になった. ドライバは車両の平面運動の二つの状態量(ヨーレイト,車体横すべり角)を,操舵角という一自由度の入力で制御して運転している.そこでヨーレイトと車体横すべり角をカップリングした物理量(本研究では進路角)を作り,その一自由度をコントロールして意図通りの車両運動を実現しようとするが,残念ながら人間は進路角の認識があまり得意でないために,車体横すべり角の大きな車は運転しにくくなるというメカニズムが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では以下の①~③の手順で進め,平成25年度は③の本実験において,現象の確認(車体横すべり角が発生すると運転しづらい事実を確認すると共に,そのときのドライバ操作の典型的な特徴などの抽出)を実施する予定であった. ①実験準備:既存装置の改良,走行条件,使用決定などの全体が円滑に進むための準備 ②予備実験:少数の被験者でデータ処理,解析方法等を決めて本実験に移行する. ③本実験:多数の被験者実験で統計的に結論を導く.現場で活用できる妥当性も検証. しかし,現象の確認に留まらず,その発生メカニズムの解明まで遂行することができた.また同時に多数の被験者による現象の確認,メカニズムの妥当性検証も行った.さらに,ドライバモデルのパラメータ同定を行って,ドライバの負担と車体横すべり角の関係などについても知ることができた.これらの結果は三編の査読付論文,五件の口頭発表にまとめられている.また本研究助成にて実施した結果を発表した上記,日本機械学会関東支部総会講演会にて講演賞を受賞したことも付記する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究においてもっとも明らかにしたかった課題である「なぜ横すべり角が小さいと運転しやすくなるか?」については,その解明がほぼ終了したので,当初予定通り,ZSPの適正範囲の定量化実験を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の菅沢教授(玉川大学・東京都町田市)に配分した額のうち,山梨大学までの研究打ち合わせのための旅費として計上した費用の一部21,700円が残った.これは研究の進捗状況により打ち合わせをメール・電話などで行い予想よりも少ない出張となったためである.そこで,その21,700円は次年度の研究打ち合わせに伴う出張旅費として繰り越すことにした. 研究打ち合わせ,学会発表などの出張費:121,700円,学会発表,参加登録費:100千円を計画している.
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