研究実績の概要 |
収録されている心音データに環境音ノイズや呼吸音ノイズなどが含まれており、心音特徴パラメータを正しく算出するため、聴音された心音データに対して適切なフィルタリング処理を行う必要がある。本年度では、まず(Frequency Slide Wavelet Transform(FSWT)解析方法を発展させ、新しく櫛型デジタルフィルタ技術を開発した。基本コンセプトは、想定された複数ノイズの成分を自由にカットできる櫛状のようなフィルタとし、低減させたい複数帯域のノイズに合わせて簡単に設定できるようなアルゴリズムを開発した。また、フィルタリング後の信号を心音データに再構築するアルゴリズムも同時に開発した。 次に心雑音のレベルを定量的に評価する方法を考案した。心音データを周波数域において、標準周波数域(SF)、低周波数域(LF)、中周波数域(MF)、高周波数域(HF)の4つの領域に分解し、それぞれの領域における信号強さ(パワーPSF, PLF, PMF, PHF)を求め、SF領域におけるパワーを基準としてそれに対する割合を心雑音評価指数(MI)と定義した。合わせて心拍数(HR)と心雑音成分を表す周波数の幅(FW)を心雑音の評価パラメータとして採用した。200正常心音サンプルと192異常サンプルに対して統計解析し、その結果に基づき正常状態の閾値を決定し、正常か異常かをわかりやすく判断するために評価パラメータをグラフ化した。 さらに、医師などが診断時に参考可能なGUIを作成した。本ツールには、音声データを表示・再生する機能、ユーザが画面上領域を選択することで簡単に設定できる櫛形フィルタの処理機能、FSWTによる時間周波数解析機能、レポート機能などが備えている。現在本GUIをクラウドでも実行できるよう、在宅用遠隔診断支援システムとしての実用化を目指して研究開発を続けている。
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