研究課題/領域番号 |
24560265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
小森 望充 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30195870)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 磁気浮上 / 機械力学 / 計測制御 / 低温工学 |
研究概要 |
<<超電導線の特性評価とコイル設計>> BSCCO線は,幅4.5mm,厚み0.4mmのテープ状で,機械的な曲げには弱いため,超電導線の曲げ特性を評価した。具体的には超電導線を曲げた状態でI-V特性を評価し,コイル作製のための基礎資料を得た。この基礎資料を基に作製できるコイル最内径の大きさを決めた。超電導線は厚さ4.5mmなので,コイルは1列多層のシングルパンケーキコイルとした。コイル最内径の大きさが異なるコイルをいくつか設計し,磁場発生に必要な電流などを評価した。 <<コイル作製>> 多列多層コイルの作製を前提とした。基本になるのはバームクーヘン状のシングルパンケーキコイルを2列並べたタブルパンケーキコイルが基本構造になる。ダブルパンケーキコイルは最内周で接続部分を持たないように,超電導線の中間点が最内周に位置するように内周から巻く。超電導電流のコイルの曲げ依存性の評価から,小さい半径(最内径)を実現するためにはGaBCO超電導線が有効と考えられるが,今回は最内径を求めるまでは実施できなかった。 <<I-V特性評価>> BSCCO超電導線とGaBCO超電導線の曲げに対する電気特性(I-V特性)を評価した。具体的には,いくつかの曲げ半径の異なる線材のI-V特性を評価し,コイル作製のための基礎資料を得た。先の基礎資料を基に最内径の異なる超電導コイルを作製した。ここでは作製コイルの出来不出来に電気特性が依存しないようシングルパンケーキコイルを用いた。そして作製した超電導コイルの最小曲げ半径と超電導コイルの抵抗(I-V特性)を評価することで,作製できるコイルの最小半径を知る事ができる。実際には,購入した超電導線材の仕様以下で通電すれば,特に問題なく利用可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超電導コイルをメカトロニクス分野で扱うことは非常に難しい。その理由として,線材をコイル形状に加工する必要があること,超電導体(バルク)とは異なる扱い方を必要とすること,などが挙げられる。この意味において,本研究の大目的の1つに,超電導コイルの利用に必要な基本的な専門技術(例えば,超電導コイルの巻き方,超電導線の接続方法,絶縁方法,など)に慣れる必要がある。今年度,これらの研究の目的は概ね達成されたと考えている。その理由として,共同研究者の根本氏(JR東海・研究所)の寄与が大きいと言える。JR東海の根本氏は,長年リニア新幹線の超電導マグネットの研究に従事してきたことから,多くの基礎的かつ重要な知見および専門技術を教授頂くことが出来た。 また,超電導コイルの基礎特性に関しては,十分とは言えない研究成果となった。理由としては,基礎特性評価のため購入した評価装置に対する習熟が十分でなかったこと,超電導線の仕様に対する理解の低さが挙げられる。今後は,もう少し時間をかけて,再度評価検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究は,昨年度までの研究成果を踏まえて,以下の様に遂行する。 <<熱永久電流スイッチの作製>> 永久電流スイッチは,局所的に加熱された超電導体部を常電導化して,永久電流を遮断するものである。永久電流スイッチにはGaBCO超電導線を用いる予定である。ただ可能性としてBSCCO超電導線も考える。超電導線の加熱にはマンガニン線を用いる。計算ではマンガニン線100mm程度で加熱時数W程度の発熱量がある。この永久電流スイッチを用いることによって,永久電流でコイルを励磁する。永久電流スイッチの電源は30V程度で十分であるが,コイル側の電流源には200A以上の電源容量が必要である。シャント抵抗(0.1Ω以下)を用いて,流れる電流の大きさを測定する予定である。超電導コイルに蓄積された電流エネルギーを消費するための抵抗も必要と考えている。この抵抗の必要性に関しては,実験で確認する。 <<永久電流の評価>> 作製した永久電流スイッチと超電導コイルを用いて永久電流の評価を行う。永久電流から発生する磁束密度を測定することによって,永久電流の評価を行う。目標としては1時間程度の時定数を考えている。また,発生する磁束密度の大きさによって,元来発生するはずの磁束密度が得られない場合があると考えている。これは,発生する磁束密度によって永久電流が影響を受ける可能性があるからだ。永久電流の評価は,超電導電流の生成,超電導コイルへの通電,永久電流スイッチへの電流の切り換えなど,結構熟練を要する作業と思われるので,成功するまで時間を有すると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
なし
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