研究課題/領域番号 |
24560266
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
岡部 匡 宮崎大学, 工学部, 教授 (00185464)
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研究分担者 |
小園 茂平 宮崎大学, 工学部, 教授 (10169302)
長田 尚一郎 宮崎大学, 工学部, 助教 (20218001)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 非線形振動 / 攪拌 / 振動利用 / 磁気ばね |
研究概要 |
本研究で開発する振動型ミキサーは,液中で磁気反発力により浮上した攪拌フィンを円筒状攪拌槽内において高振動数域で共振させ,各種物質の攪拌・混合工程の劇的な効率化をはかるものである.本研究の特徴の一つとして機械系では避けられるべき共振現象を積極的に利用することがあげられる.本研究では,攪拌フィンの駆動機構として,攪拌フィン部磁石に作用する周期変動磁気力を利用する.本ミキサーにおいては,攪拌槽内の攪拌フィン駆動用の機械的部材が必要なく,攪拌槽内を周囲環境から完全に遮断できる.このため従来の混合装置で深刻な問題となっていた混合液への外部からの不純物の混入や各種駆動用の各種機械部品に発生するカビの問題なども解決できる. 本年度の研究では,現在使用されている機械駆動方式の振動型ミキサーで実績のある運転周波数(フィンの振動周波数)15Hz以上で攪拌フィンの非線形共振を発生させることを目的として,上記の振動型ミキサーの構造,攪拌フィンの駆動機構など詳細な検討を行い試作機の設計を行った.また,試作機を実際に製作し基礎実験を行った.その結果,攪拌槽を液体で満たした状態で十分に高い振動数で攪拌フィンを共振させることができた.また.磁化反発力に対する近似式の作成,攪拌フィンの運動の解析のための数学モデルの構築などを行い,攪拌フィンの運動解析のための基礎理論を確立した. 次に,攪拌槽外部に設置したコイルに流す交流電流の周期的変動を利用した攪拌フィン電磁的加振方式を採用した振動型ミキサーの開発についても検討を行った. さらに,液中で振動するフィンまわりの複雑な流体運動の数値シミュレーションを行うため,粒子法の一種であるSPH法の計算理論に基づいた数値計算プログラムの製作を行った.このプログラムの利用により,本研究で用いる振動型ミキサーによる攪拌メカニズムを明らかにすることが今後可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.平成24年度は,液中で磁気浮上する攪拌フィンを利用した振動型ミキサーの試作機の設計・製作に重点的に取り組んだ.現在使用されている機械駆動方式の振動型ミキサーにおいて高効率混合が実現できる攪拌フィンの振動の振動数は15Hz以上である.本研究で開発する磁気浮上型攪拌フィンを利用した振動型ミキサーにおいても,攪拌フィンを振動周波数の目標値を15Hz以上と設定して,攪拌フィンの磁気励振機構,ミキサーの基本構造などの検討行った.まず,攪拌フィンの運動の構造,本ミキサーで使用する磁石の選定(ネオジム磁石)について検討を行った.次に,攪拌槽外部に設置した永久磁石の周期的運動による攪拌フィンの駆動機構の検討を行った.その結果,液体(水)で満たした円筒状攪拌槽内で攪拌フィンを約16Hz,攪拌フィンの振動振幅3.6mm(両振幅値)の非線形共振を発生させることができた.ただし,振動振幅が若干不足しているため,今後改良を行う計画である. 2.本ミキサーの設計において,攪拌フィンの運動特性を把握しておくことが必要である.そのため,磁化反発力に対する近似式の作成,攪拌フィンの運動を解析するための数学モデルの構築など攪拌フィンの運動解析に必要となる基礎理論の構築を行った. 3.攪拌槽外に設置したコイルに流す外部交流電流の周期的変動を利用した電磁加振による振動型ミキサーの設計を行った.平成24年度においては,この方式の振動型ミキサーの設計を開始した段階である. 4.本ミキサーの攪拌槽内での攪拌フィン周辺流体の運動の解析を実施するため,粒子法(SPH法,MPS法)による流体運動解析プログラムを作成した.現在,いくつかの簡単な計算モデルに対する流体運動に対し,差分法や有限要素法による解析結果と照合などを実施し,本研究で開発したプログラムの有効性の検証を行っている段階である.
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今後の研究の推進方策 |
1.平成24年度の研究において検討課題として生じた攪拌フィンの振動変位の増加をはかるため,攪拌フィン駆動機構に改良を行う.このため,両振幅6mm以上の振動変位が得られるよう使用する磁石の変更,攪拌装置の構造変更,攪拌フィン形状の変更,攪拌フィンの加振方式の改良を実施する.攪拌フィンの振動振幅のさらなる増加には,さらに強力な磁気力を作用させる必要がある.このため,新たな加振方式についても検討する計画である. 2.現在検討中の攪拌槽外部の励振コイルによるによる電磁加振式のミキサーの試作機を設計・製作する.この方式のミキサーにおいても,攪拌フィンの振動周波数を15Hz以上,フィンの振動振幅6mm(両振幅)以上を目標値として設定して設計を進める. 3.本研究で開発中のミキサーは,前述の攪拌槽を1ユニットとし,これを複数ユニット多数直列に連結して使用することも可能である.この場合,攪拌フィン最良な励振機構が確立できれば,直列に連結された各ユニットを,物質に最も適合した振動数,振幅で振動させ,他種類の物質の攪拌・混合を連続的に実行でき,その結果混合効率を向上させることが可能となる.このような,複数ユニット連結型の混合装置についても検討を行う. 4.攪拌フィンに形状は攪拌性能に大きく影響を及ぼす.しかしながら,異種物質の攪拌のプロセスを解明するためには,既存の解法(差分法,有限要素法)では不可能である。本年度は、攪拌槽内の流体の運動解析のための粒子法(SPH法,MPS法)の計算プログラムを完成させる.定量的・定性的な精度を把握するため,多くの例題に対し数値計算を実行し,既存の解法による計算結果との整合性を検証し,本研究で作成したプログラムの信頼性を確認する.その後,開発したプログラムにより,攪拌槽内の流体運動の数値シミュレーションを実施し,最適フィン形状などについて検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
1.平成24年度に試作したミキサーの改良,電磁加振方式の振動型ミキサーの試作機の製作を行うための材料費,製作・加工費などの消耗品,及び実験用計測器の購入などに使用する計画である. 2.攪拌槽内の攪拌フィンの振動変位を正確に計測する必要がある.しかしながら,攪拌フィンは液中で高速運動しているためレーザー変位計や加速度ピックアップなどの通常の変位の計測方法では,攪拌フィンの変位を測定することは不可能である.このため,高速度カメラを利用した2次元変位計測システムを導入する計画である.現状では,高速度カメラで得られた情報を画像処理し変位を測定する計画であり,この計測システムの構築に予算を使用する計画である. 3.攪拌槽内の流体の運動解析のための粒子法(SPH法,MPS法)の計算プログラムを完成させる.このプログラムを用いて,攪拌フィンまわりの複雑な流体挙動の解明を行い,最適フィン形状などについて検討を行う.粒子法の計算には,多大な演算処理,演算時間を要する.このため,数値シミュレーション使用するための高速演算可能なPCまたはワ-クステーションの導入をはかっていく.
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