研究課題/領域番号 |
24560267
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
吉村 卓也 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (50220736)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 振動騒音低減 / 周波数応答関数 / 構造変更 / 感度解析 / 質量付加 / 実験モード解析 |
研究概要 |
1.質量付加,剛性付加による騒音低減の有効確認と問題点の整理 構造変更による騒音低減効果を実際に確認し,適用範囲を検討した. 1)1点質量付加の検討:提案する感度解析法では付加質量が微小な範囲で成り立つものと仮定しており,付加量がその範囲を超えた場合には,取付け点の自己FRFを用いて再計算する方法を提案している.まず感度に基づく予測精度について検討した.質量付加による動特性変化の非線形性が強い場所と弱い場所があるが,構造変更後の特性を定量的に予測するためには,自己FRFに基づく再解析が簡便でかつ有効であることが分かった. 2) 複数個所への質量付加検討:複数個所に質量を取り付ける場合には,それらの相互作用の影響を考慮する必要がある.まずは複数個所への質量付加の予測方法を検討し,質量付加点同士の相互作用について検討した.複数個所取付けの場合は,取付け点間の相互FRFを考慮する必要があることを明らかにし,その影響を検討した. 3) 板厚付加:パネル振動の騒音低減に対しては,曲げ剛性付加を検討する必要があり,研究代表者らは,パネルの板厚付加による構造変更をパネル表面に沿った剛性付加として定式化する方法を提案した.これを実際の板構造物に適用し感度解析を実施した.なお,パネルの曲げ振動を評価するためには,通常測定する面直方向の加速度だけでなく,パネル面の角加速度も測定する必要があり,角加速度を簡便に精度良く測定することが,課題であることが分かった. 2.感度と物理現象の関連整理 音圧に対する質量付加感度が高くなる理由を考察した.質量付加感度は,音響加振によるFRFと評価点音圧と質量付加点の加速度のクロススペクトルによって表されるため,これらの要素を個別に評価する事が鍵になる.音響加振FRFと音響加振による構造応答FRFをから感度が高くなるメカニズムについて考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した検討事項については,ほぼ想定通りに進んでいる.基本的な構造変更感度の妥当性を概ね確認できた.また問題点として,パネル振動による騒音低減を対象とした剛性付加の構造変更においては,振動の角加速度成分が必要であることが分かった. 低減対象とする騒音は,車室内騒音のような閉空間の音圧としていたが,昨今の環境問題への対策などの観点から,開空間における放射音低減の必要も増している.この観点から,新たに放射音低減のための構造変更を検討対象に加えることを予備的に検討しており,今後の研究推進の中で盛り込んでいく事を検討した. なお,当初購入物品として予定していた多チャンネル計測用データステーションについては,現有の備品で代用できることが分かったため購入を見送り,H25年度に実施予定のレーザドップラー等を用いた振動実験に充当することにした.
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今後の研究の推進方策 |
1.質量付加,剛性付加,減衰付加による騒音低減の効果検証 1) 減衰材のモデル化:減衰材付加については,パネル構造においては曲げ振動に対する減衰付与として捉え,曲げ振動へに対する減衰感度解析を試みる.このためには減衰材の曲げ振動に対する減衰効果を評価しモデル化する必要があり,この減衰のモデル化を含めて実施する. 2) 構造変更による騒音低減について,放射音を対象とした方法の検討をさらに進める.まずは基本的な関係式を導き整理する.さらにその妥当性について検討する. 2.感度と物理現象の関連整理 1) 24年に検討された結果を踏まえて現象観察を行う.ただし現象理解のためには,基本特性が既知の対象を用意する必要があるため,車両を用いた数値シミュレーションにより,感度の高い部位と物理現象との関連をさらに整理する.例えば,音響加振構造応答のFRFからは,車室内共鳴に寄与する構造振動成分を観察する事ができる.また,音圧と構造加速度のクロススペクトルからは,音と振動の相関を見ることができる.これらの総合的な影響として感度が算出されるが,高い感度に対してこれらの要因分析をすることで,現象の理解と構造対策の方針が得られることが期待される.実際の構造変更を施す際には,感度が高いからという理由だけでなく,どのような要因によって感度が高くなっているかを知る事が,対策立案の上でも重要である.
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次年度の研究費の使用計画 |
パネルの面振動を細かく測定するために,スキャニング型レーザドップラー振動計を使用する予定である.これは,大変高価(数千万円)な物品であるため,基本的にはリース契約により計測することを予定している.実車両を対象とする場合には,反無響室のような実験環境も必要となるため,このような実験環境のリース等については,別途検討する. これらは当初24年度の実施を予定していたが,協力企業と協議の上,効率的な執行という観点から25年度実施予定とした. また,振動騒音の計測実験を行うためのセンサー類の購入や,学会発表のための旅費等を予定している.
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