研究課題/領域番号 |
24560270
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 足利工業大学 |
研究代表者 |
阿南 景子 足利工業大学, 工学部, 准教授 (30346077)
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研究分担者 |
石井 徳章 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (40098083)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機械力学 / 流体力学 / 流体関連振動 / 自励振動 / 連成振動 / 動的不安定 / 安全対策 |
研究概要 |
大形テンタゲート式水門の崩壊事故を二度と繰り返さないために、本質的に動的不安定特性を有するテンタゲートに対して、長期的な安全運転のための具体策を提示するために、理論的な解析、安全対策手法の検討、モデル実験を行った。 (1) 動的不安定性の理論的な解析:これまでの振動実地調査によって得られた固有振動特性に基づいた理論解析により、ゲートの動的安定・不安定を再確認した。動的に不安定であることが明らかになったテンタゲート、および、摩擦によって見かけ上の動的安定が保たれているテンタゲートについて、実測された減衰比のデータを用い、摩擦の閾値を越えて自励振動が発生する初期変位量を算定した。また、動的に安定であることが確認されたゲートについては、これまで慣例的に運転されて来なかった微小開度での放水を可能にするため、微小開度放水時の安全性の再計算を行い、実際に微小開度放水を実施してその安全性の確認も行った。 (2) 動的不安定に対する対策の検討:発生し得る動的不安定に対する長期的な安全対策手法について検討を行った。減衰器の設置や質量の付加・除去、スキンプレート構造の補強等が考えられるが、いずれの手法が最も効率的であるかを慎重に検討しているところである。理論解析とFEM解析を併用し、ゲートのどの部分に減衰器を取り付けるべきか、または補強すべきかを検討しているところである。これにより、最も効率的な安全対策を行うことが可能となる。 (3) 大形および中形の三次元モデルゲートを用いた実験:検討した動的不安定に対する対策について、大形と中形のテンタゲートの三次元モデルを用いた実験を実施している。主に、ゲートを巻き上げるワイヤーのばね定数を変更することで安全性を確保する方法について、実験を継続中である。 (4) 研究成果の発表:理論解析で得られた成果を国内外で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 動的不安定性の理論的な解析:これまでの実験結果と理論解析に基づいて、実用テンタゲートの動的安定・不安定を再確認した。摩擦の閾値を超える初期変位量まで計算できている。当初の予定どおりの進捗である。 (2) 動的不安定に対する対策の検討:長期的安全運転を確保するための対策を検討した。理論解析とFEM解析を併用し、ゲートのどの部分に減衰器を取り付けるべきか、または補強すべきかを検討しているところである。FEMの解析は予定よりやや遅れ気味であるが、理論解析を整理し、FEM解析ができ次第、結果を理論解析にフィードバックして、最も効果的な安全対策手法を検討する予定である。 (3) 大形および中形の三次元モデルゲートを用いた実験:。主に、ゲートを巻き上げるワイヤーのばね定数を変更することで安全性を確保する方法について、理論解析とモデル実験により検討を進めているところである。比較的簡単に安全を確保できる方法と考えている方法である。実験による基本的な検討できており、詳細なデータを収集しているところである。ゲートの設計基準等と照らし合わせながら、ばね定数等を決定しているところである。また、(2)で検討している対策方法についても、今後モデル実験で確認する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 動的不安定に対する対策の検討:平成24年度の研究成果をもとに、具体的かつ現実的な手法を検討する。たとえば、大形テンタゲートの構造を補強する場合、付加する補強材が多くなると、費用等の問題も生じるため、実現はかなり難しくなる。できるだけ少ない部材で最も効率的に補強が行えるよう、補強する場所、補強材の形状、材質等を検討する。さらに、大形テンタゲートに減衰器を取り付ける場合には、かなり大きな減衰器が必要になる。減衰器の構造、材料等についても検討し、実現可能な減衰器の構造を検討する。 (2) 大形および中形の三次元モデルゲートを用いた実験:検討した動的不安定に対する具体策について、大形と中形のテンタゲートの三次元モデルを用いた実験を行う。検討結果に基づいた補強、および、減衰器を取り付けたモデルを作成し、その効果を確認する。 (3) 実用テンタゲートへの適用準備:動的不安定な実用テンタゲートについて、モデル実験でその有用性を確かめた対策を適用するための準備を行う。複数の案を提示し、関係各所で理解が得られるよう説明会等を実施する。理論解析、FEMによる解析および安全対策手法に関する追加のモデル実験等を十分に行い、理解が得られ次第、実用テンタゲートへ適用するための準備を行う。 (4) 研究成果の発表:得られた研究成果を国内外で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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